第68話 神を信じるか
「パンダゴハンダはぷろがパンダ……なるほどそういうことだったのですね!」
「撫子、プロパガンダだ」
いつものような撫子の言い間違いに蘇芳はほっとした。しかし話は『撫子が給料を自分を着飾ることに使っているかどうか』だ。パンダゴハンダのことでそれてしまったが、このグッズだらけの様子では給料を被服費や美容費にあてている様子はない。
「……つまり衣服には使っていないんだな?」
「パンゴハの着ぐるみパジャマが来月出るのでそれを買うつもりです」
「それは俺の想定しているものと違う。クララ、せっかくだからこのドレスからコーディネートしてやってくれないか?」
「はいっす!」
撫子のセンスは不安がある。なので蘇芳は意外に面倒見がよく頼れるクララに頼んだ。クララはそう言われるのを待っていたかのように手をわきわきとさせる。黒髪小柄で無表情ぎみだが整った顔立ちの撫子は、着せ替え人形のように色んな服を着せると絶対楽しいはずだ。
「それじゃあまずはドレスの箱から開けるっす! あ、なでチャンは脱いで、男共は出てくっす!」
クララは追い出すように蘇芳とアズールの背を推す。なんとか自分用のスーツと靴の箱を手にした蘇芳は部屋を出て、改めてアズールに礼を言う。
「荷物を運んでくれてありがとう。こんなにたくさん、大変だったろう?」
「いや」
やはりアズールは返事はあるがそれが短い。実際なんとも思っていないようだ。これでは会話が続かない。しかしアズールは貴族のような服装のポケットから何かを出した。そのまま蘇芳の持った箱の上に乗せる。
「これも渡すよう頼まれていた」
「これは……手鏡じゃないか。俺が失くした」
黒塗りで金などの細工のされた芸術品のような手鏡。それは蘇芳が少し前、人間の娘に貸してそのままどこかに行ったため返ってこなくなったはずのものだ。それが現在アズールを通して蘇芳の手元に戻ってきた。
確かにブランは『また戻ってくる』とは言っていたが、こんなにはやくに戻ってくるとは思わなかった。
「ありがとう。大切なものなんだ」
「お前は神を信じるか?」
礼を言えば、電波な質問をされた。神。そんな宗教の勧誘のようなことを、まさか魔王軍参謀エルフにされるとは思わない。まったく脈絡がないのはコミュ力の低いエルフらしいと言えるのかもしれない。
しかしそれでも同じ魔王軍に所属するものとして嘘はつけない。そして宗教の話は下手をすれば争いを生むので適度に曖昧さを持たせなければならない。
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