第67話 パンダゴハンダ専門ショップ

「撫子、お前の給料の使い方には口を出すつもりはないが、ちゃんと自分のために使っているか? 節約も大事だがそればかりではいけないぞ」

「蘇芳様まで。私だって普通にお金を使うくらいできます」

「例えば?」

「このパンダゴハンダポーチです!」


撫子は机の上のポーチを自信満々に取り出した。

そのポーチには白黒のクマの絵が描かれている。とてもゆるい絵柄で、蘇芳にはそれに見覚えがあった。


「パンダゴハンダ……たしか現魔王の産み出した最強の魔物か。しかしこれ、どこで売っていたんだ」

「魔王城にある専門ショップです。シャープペンシルにノート、クリアファイルもあります!」

「いつの間にグッズ化を!? それに撫子がカタカナ語をこんなになめらかに話せるなんて!」


二つのことに蘇芳は驚いた。パンダゴハンダについてはもちろん蘇芳も知っている。ブランがスランプ中の気分転換に作ったおにぎりからひらめいた魔物だ。見た目ゆるいくせに強くて、ブランの代表作となりつつある。

それがいつの間にかキャラクター化してグッズになって、撫子はそれにハマっていたらしい。グッズを紹介するたびに瞳を輝かせていた。


「パンダゴハンダはすごいんです。この愛らしさやゆるさに癒やされ、その強さに血が騒ぐのです!」

「あー、現魔王は見目よくきさくで人気で、その人気ゆえに流行も生み出してるっすからね。今女性魔物の間でショート流行ってるくらいだし。キャラものだって流行るはずっす」


クララは分析する。ブランはこれまでの魔王と比べて見た目が優れている。男性人気はもちろんのこと、女性も憧れる者は多い。そうなると髪型や服など、ブランのマネをする者は多い。そして作り出した魔物も流行する。

さらには今まで黙っていたアズールも口を開いた。


「見た目のいい者は侮られる事が多い。魔王陛下の支持率が下がらないよう、側近たちで策を考えた。まずは陛下の見た目、そのセンスを逆に利用した。広報関係者に陛下のファッションを推し、創った魔物も推す。つまりパンダゴハンダはプロパガンダの一つだ」


参謀として、アズールは最近のなぜブランが関連したものが流行したかについてを語った。人気だから流行っているのではなく、流行らせたから人気とも言える。

魔王にも支持率というものがある。政治が下手、魔物創作という能力から生まれた魔物が役に立たないと支持率が下がる。支持率が下がった状態で新たな魔物創作の能力を持つ者が他にいればリコールされてしまう。

なのでブランの側近、アズールやロゼは考えた。彼女の見た目や独特なセンスを活かす。彼女の服や髪型は流行り、創った魔物は今までにないゆるさから人気だ。

現にブランはいままで魔王軍や魔王に興味のなかった女性魔物層などの人気を取り込み、支持率は高く維持したまま十年やってこれた。

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