第34話 最強のパンダゴハンダ
緊張からごくりとロゼは喉を鳴らした。彼女もパンダゴハンダの素晴らしさはよく知っている。あれはゆるゆるして見えてめちゃくちゃに強い。それがおにぎりでできてしまうとは。もしかしたら、蘇芳の料理はすごい効果を持っているのかもしれない。
「で、でも、こちらが食べ慣れないコウ料理が特別ひらめきやすいというだけかもしれませんし」
「かもね。だから今度撫子ちゃんにもお弁当作ってもらうつもり……なんだけど、あの子も蘇芳君に料理教わってるみたいだから検証はできないかな」
「コウの料理でひらめくのならコウの魔物も強化されているのでは……」
「コウは新しく魔物を創る必要はないんだよ。共存だからね」
ロゼは少し前の話題に遡って納得した。コウの魔物は人間と共存している。たまに戦う事はあるが、それはその共存のルールを破ったものを倒すくらいだ。なのでとくに戦力を必要としない。
そもそも魔王でコウ出身のものはいないし、魔王軍に関わる人はいなかった。もしかしたら魔王の中にはコウ料理を食べた者もいるかもしれないが、権力者が薄味で質素に見えるコウ料理を好むとは思えない。だからこんな大事なことに今まで誰も気付かなかった。
「まぁ、調べたいところだけどこれ、内緒にしてね。蘇芳君がひらめく料理を作れるのなら、先代魔王達も次期魔王候補も、皆蘇芳君を欲しがっちゃうから」
「……でしょうね。魔王である条件とは、『誰よりも強い魔物を創れる事』なのですから」
魔王軍を統べる魔王とは、血で継ぐものではない。能力で継ぐものである。
魔王軍配下の中で新種の魔物を創る能力の持ち主の中から、一番優れたものが魔王に選ばれる。ブランは十年前にそれに選ばれた。先代魔王は吸血鬼の男だったが、それに勝ったのだ。
つまりブランには魔物創作の才能が一番あると言っていい。しかしその才能の源が鬼族青年の料理だとすれば、皆が蘇芳を味方に引き込もうとする。
先代魔王はブランに負けたが過去の権力を諦めきれていないようだし、次期魔王候補もブランを押しのけ魔王となりたいはず。そしてブランもまた、魔王の座は簡単に捨てられるものではない。
「……とはいえ、ブラン様は料理などなくても強い魔物を創れるはずです。話してばかりおらず手を動かしては?」
「うう……これから蘇芳君が来るならもう何も考えたくない……」
「そんな不思議なアイテムに頼ってどうするのです。まずは自力でなさらないと」
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