第35話 先代魔王達


正論のロゼにブランは再び机に伏した。

強くて環境に適応できてすでにある魔物と共に戦えるような魔物なんて、そう簡単に思いつかない。

なのでそんな主人を支えるため、ロゼは改めて条件を出した。


「ブラン様。この薄明の城に必要な魔物は、我ら吸血鬼をサポートする魔物です」

「吸血鬼を、サポート……」

「ええ。この城、主戦力は吸血鬼です。昼間は眠っていますが、多少騒がしければ起きてきます。人間共の街を自ら攻撃する事はありませんが、侵入者は無傷で帰しません」


吸血鬼とは、文字通り人間の血を吸う人型魔物である。知性を持ち体も強い。このダンジョンの主力といっていいが、昼間は寝ているし血を飲まないと弱体化する。ならばそれを補うような魔物を創るといいだろう。


「現在このダンジョンにいる魔物は吸血鬼の他二種です。シルクウサギにホネトカゲ。それらは先代、先々代魔王の傑作ですので、くれぐれも彼らを傷付けない魔物を創りましょう」

「先代達のしがらみめんどすぎー……」


当たり前だがブランより前の魔王も魔物を創り、その魔物が現在このダンジョンで生息している。しかもお気に入りの魔物だ。もしもその魔物の天敵となるような種族を創り絶滅させてしまうと、先代魔王達やその支持者に恨まれてしまう事もある。

先代魔王は生きている場合も多いし、魔王を輩出した種族は魔王軍の内部でないがしろにされたくはない。だからうっかり絶滅させた魔物次第でブランは敵を作ってしまうこともありえた。


「吸血鬼の当主である先代魔王、というか私の父はシルクウサギをたいそう気に入っていらっしゃいます。自らが主催して毛並みの美しさを競う品評会も行っているほどです。それが絶滅するような事があれば、もしかしたら吸血鬼は魔王軍に参戦しない、なんて事があるかもしれませんね」

「楽しそうに語るね、ロゼは。自分だって吸血鬼のなのに」

「先代魔王や吸血鬼の一族の思惑など関係なく、私はブラン様にお仕えしているのです」


ロゼはいつもより柔らかな笑みを浮かべた。ロゼは本来こんな侍女のような事をするような低い身分ではない。先代魔王の娘、そして現在の吸血鬼の長の娘だ。もっと重要なポストを与えてもいいような高貴な立場だが、自らブランの側に仕える事を選んだのだった。


「いっそ、めんどくさいシルクウサギを絶滅させて吸血鬼を追い出してはいかがでしょう。吸血鬼がなくとも、わたくしはブラン様にお仕えします」

「それはだめでしょ……なんとかいい魔物を考えないと」


魔王のカンヅメはまだまだ続く。そしてロゼに与えられた案内役の仕事は二人共すっかり忘れてしまっていた。

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