第30話 魔物と人間の国
そんな口実でロゼは蘇芳との待ち合わせに夜まで向かわないらしい。ブランは困ったが、蘇芳ならこのダンジョンに案内なしにここまで来れるはずだ。無理にロゼを蘇芳のもとへ向かわせたりしない。ただ、二人には仲良くはしてほしいとは思っているが。
「ロゼは蘇芳君のこと、そんなに嫌いなの?」
「嫌いですね。鬼という存在自体が嫌いです」
「吸血鬼と鬼、かなり似た存在みたいだけど」
「まったく違います!」
細い眉を釣り上げてロゼは反論した。同族嫌悪というやつだろうかとブランはため息をつく。血を吸う鬼と、肉を食らう鬼。種族としてはかなり近い。ただ鬼の方は最近人肉は食べない。それも彼らが決めた取り決めからだ。
「鬼だけでなく、そもそも東の魔物が嫌いなのです。あのコウという国は、あろうことか人間との共存を目指しているそうではありませんか」
「共存、私はいいとおもうけどなぁ。あの国は災害多くて対立してる場合じゃないし」
コウの国は魔物と人間が激しく争う事はない。住処を分け、自分達の領域を守るだけで余計な争いはお互い好まないという。揉め事が起きればその都度代表を出して交渉する。そんな生活のため、鬼は人を喰らわなくなったという。
「共存に異論はありませんよ。ただ、彼らは魔王軍に参加はしていません。なのにあの馬の骨は、自らの立場の都合が悪くなって逃げ出して、今まで無視していた魔王陛下を頼ったのです。あまりにも図々しい話です」
「べつに私は無視されてたわけじゃないよ。まぁ、コウの魔族にも協力を求めるべきだなんていうのもいるし、鬼族の協力を得られたら心強い。でも鬼族には鬼族の守らなきゃならないものがあって、無視しなきゃいけないだけだよ」
世界に散らばる様々な魔物は種族ごとにそれぞれの考え方があり、魔王軍に協力するものしないもの、稀に人間に協力するものと分けられる。魔物だからと魔王に従うわけではない。それでも魔王に従う事に利点があると考える種族は多い。コウの国、それも鬼族は中立派だ。
しかしその戦闘力と知能から味方にしたいと魔王軍も考えていた。
そんな中、鬼族の中で争いが起き、蘇芳と撫子はコウの国から出なければならなくなった。そこで魔王軍の庇護を得る事になったという。そこだけ聞けば、ロゼが図々しいと考えるのも無理はない。
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