第26話 聞けない性別
「ええと……」
「ああ、俺達の名前だろうか。俺がスオウで、こっちがナデシコだ」
名前を聞いた。これで小さな子の性別が判る、と思ったコーラルは勝手に盛り上がり勝手に落胆した。
ナデシコ。東の名前は性別がわかりにくい。〜コは女子に多くつけられる名前だそうだが、稀に男子にもつけられると聞いたことがある。
「蘇芳さんと撫子さん、でいいの?」
「ああ、呼び捨てで構わない。君の名は?」
「コーラルよ。案内させてもらうわ」
コーラルは諦めて依頼に専念する事にした。撫子が男であろうが女であろうが、依頼人には変わりない。
先に進むことにする。しかし蘇芳が歯切れ悪く尋ねた。
「コーラルは、その……」
「なに?」
「……いや、なんでもない」
蘇芳は何か聞きたそうにして、結局聞かなかった。何だろうとコーラルは思うが、これからこの依頼人を守りつつダンジョンを案内するのに気を配らねばならない。疑問はとりあえず捨てた。
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「コーラルは、その……」
「なに?」
「……いや、なんでもない」
蘇芳は結局聞きたいことを聞けなかった。『自分達はここのダンジョンにでカンヅメ中の魔王に物資を届けに来たのだが、君は本当に案内役の吸血鬼か?』と
「蘇芳様、どうしてお聞きにならなかったのです?」
非難じみた声で撫子が主に向かい小言で尋ねる。先を歩くコーラルには聞こえていない。
「聞けないだろう、これはデリケートな問題だ」
「照り毛糸な問題だとしても、確認は重要なことでしょう」
「しかしだな、『君は本当に吸血鬼か?』なんて失礼な質問ではないか?」
蘇芳も小声で、撫子に例を出して問う。
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