第24話 ギルド

「あんたもねぇ、そろそろやめ時じゃないかね。いくら生活に困っているとはいえ、こんな危ない仕事をするこたないよ」

「あたしだってそうしたいけど、そうはいかないのよ。弟達のためにももっと稼ぐ方法は考えないと」

「弟達のためならなおさら早くやめるべきだよ。稼ぎ頭に何かあったらどうするんだい。あんたに何かあったとして、それを家族に伝えるのはおれなんだよ」


面倒そうな響きだが、しかし心配や同情もこもった受付の言葉だった。ギルド受付も彼女の身を案じているのだろう。

コーラルは貧しい。父親が蒸発したため、三人の弟と病弱な母とで暮らしている。なので彼女が給仕の仕事をしつつ、ダンジョン探索もしているのだった。


「ダンジョンでいいものを拾うだけだって、ガラクタばかりじゃないか。そう簡単に魔石なんて拾えないものだよ」

「でも、昔の冒険者の装備を持ち帰ればお金になるかもしれないじゃない」

「数十年放置されたような魔道具ならね。三日前に冒険者が落としたナイフを拾ったところでどうしようもないよ」

「でも、そのナイフがダンジョンで亡くなった人のものなら、遺族に届けてあげないと」

「届ければ遺族は喜んで謝礼を払うだろうさ。けどあのナイフの持ち主は魔物にビビって落として逃げただけ。まぁ、そのナイフが『嫌な思い出だからもう見たくない』っていって、あんたのものになったから良かったかもしれないが」


コーラルはスカートの下、太もも下のベルトに装着したナイフを思い出した。

このナイフはコーラル初めての戦利品だ。ダンジョンで拾った。しかし持ち主は名声欲しさと暇つぶしでその三日前にダンジョンに挑んだ金持ち息子のものだった。魔物を見て恐怖からナイフを振り回して落とし、そのまま逃げ帰ったらしい。

ダンジョンでの拾いものは拾い主のものとなる。しかし念の為コーラルはナイフを金持ち息子に届けたが、返された。そのため今はコーラルのものとなった。


ダンジョンに落ちている装備とは、大抵が冒険者が身につけていたものだ。その冒険者が死んで装備だけが残る。ダンジョンの中にあるものは魔力を帯びるため、何十年も放置された装備は魔力を帯びて不思議な力を持つ。魔道具と呼ばれ、売れば大金になるだろう。

期間が短く魔力を帯びる事がなかったとしても、それは冒険者の遺品かもしれない。遺族に届ければ、運が良ければ謝礼金が出るかもしれなかった。

とにかく安全に稼ぎたいコーラルはこの二つを狙っている。しかし今のところ大きな稼ぎはなく、ギルドの仲介料などがなんとか払えるほどの収入だ。

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