第22話 カンヅメ終了
「……わかった。魔王陛下、この種は本当に増やせるんだな?」
「えっ、あ、うん。低コストだし、素材もそんなにいらないから。オスとメスをいくらか作れば勝手に繁殖すると思うし、そんなにものも食べないし」
「じゃあ今回の創作魔物はこれで行こう。その代わりトラップや派遣魔物を増やすからな」
ぱっとブランの表情は明るいものとなった。厳しい蘇芳が認めてくれるとは珍しい。
ただ、インプリッグは戦闘能力があまりない魔物だ。その分の埋め合わせもしなくてはいけないので、トラップや他の魔物を増やすしかない。
「他にもこのダンジョンの改善点は山ほどある。弁当を食べ次第それも直すぞ」
こうして魔王陛下のカンヅメには蘇芳と撫子、クララの手が加わって仕上げに入る。
結局ブランがこの塔を出たのは翌日となったらしい。
■■■
それから二ヶ月経って。様々な魔物の協力があって、塔は劇的に変化していた。
そしてダンジョンの入り口付近にて。
「なぁ、これどうしたらいいと思う?」
なんとか前髪が伸びたツンツン頭の勇者は、仲間たちに尋ねた。その足元には黄色く丸い雛鳥が『ぴよぴよ』とまとわりついている。親認定されてしまったのだった。
「……もしかしたらこれから恐ろしい生き物に成長するかもしれない。ギルドに預けて研究してもらおう」
一番大きな体をした戦士が言った。
「待て待て、珍しい生物かもしれない。変な趣味の金持ちに売り飛ばそうぜ」
一番小さな体をした魔法使いが言った。
「なんて愛らしい鳴き声なんだ。飼ってみてはどうだろう」
リュートを担いだ吟遊詩人が言った。
「全部やってみよう。とりあえず三体いればいいな?」
そして勇者は決断した。研究用、売り物用、飼育用と三体のインプリッグを持ち帰る。もちろんそれ以上ダンジョンに進むことはない。
そして三体のインプリッグは連れて行かれた。ずっと雛のような形状でいる生き物なのに、愛らしい雛のままで、とても大事に研究されたという。。
そしてダンジョンに侵入者は来るものの、インプリッグだけを持ち帰ることになったという。
END
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