第2話

「カナメ、3時のおやつプリーズ」

それにしてもこの殺人犯クソだなと、ワイドショーを見ている主婦のような事を言う彼女こそ、僕の非日常の始まりのきっかけ、名は"サヤ"である。

「買い置きしているポテチ、この袋の中にあるって言っておいたじゃん」

と、文句を言いながらクローゼットの取っ手に引っ掛けてあるエコバックからポテチを1袋取り出しテーブルに置く。

覚えてない。メモしておけ。と相変わらずの口の悪さで文句を言いながらも、ポテチを開けて食べながらアホ面でワイドショーを見ているサヤ。

一応は美少女…だよな。髪は黒髪で肩にかからない程の長さの綺麗なストレート。パッチリとした二重まぶたに、光の加減ではブルーにも見えなくもない、綺麗なグレーの瞳。キツイ口調ではあるものの、その眼差しは綺麗で、何か心を見透かされてるような感覚。150cm程の身長。あくまで僕と比べての予想だから、正確ではない。僕が165cmだから、頭半分ほどの差かな?細身で筋肉なんて無さそうに見えるのに、意外と力があって、蹴ってくると痛い。腹立つな。

胸は…俗に言う、貧乳というやつなのか、あまり無いように見える。B?A?そもそもその基準をよく分かってない男子高生には判断は厳しいもので…

「カナメ、何ジロジロ見てんだよ。気持ち悪い」

ようやくこちらを向いたと思ったら、そんな罵倒である。

多分…多分だけど、僕の方が歳上のような容姿をしているよな。14歳くらい?1歳2歳差くらい。敬語を使ってほしいものだ。

「別に胸なんて見てねえよ」

「あ"?」

「あ…」

思った事を口にするという事もあると、今良い人生経験をした。今でよかった。大人になってからだと、セクハラで訴えられそうな案件です。

「テメ…今度、胸の話ししたら、一生童貞のままにするぞ!」

黒髪美少女がえらく攻めた暴言を吐く。

「いや、それだけは勘弁してください!まだ未使用だから!新品未使用未開封だから!ノークレームノーリターンだから!」

「うっせ!罰だ!お前の今晩のおかずは貰うからな!」

今晩って、昨日もあなた私から唐揚げ奪ったじゃないですか。

本当に顔は可愛いのに、言動も行動もただのDQNじゃねえか。残念美少女か。

少しだけ非日常を忘れられる日常会話。そんなやり取りをする中でボソッとサヤが呟くように

「ざけんなよ?わかってんだろうな?お前は…」

「わかった。次は気をつけるよ」

サヤの言葉を遮るようにほんの少しだけ冷たさが流れる非日常の空気。自分の言葉でサヤの言葉に上塗りをする。

「…チッ。わかってんならいいよ。」

よく例えで、男なら未経験の事に対して、童貞という言葉を使う。

それは、女性経験がゼロって意味ではなく、経験してないって意味での。

カラオケ童貞、職質童貞、ズル休み童貞、告白童貞。

女性なら、童貞の部分が処女に変わるのだろう。

"ある事"だけに関しては、僕もサヤも経験済み。非童貞、非処女なのだろう。

そう。"ある事"に関しては。

少しだけ僕が表情を曇らせるのを察してかどうかは知らないが、

「今晩のおかず何?」

ふとしたサヤの何気無い質問に僕の思考は日常に引き戻されていく。えーと、と手に持った僕が所持しているもう一つのエコバックの中から挽肉を出し、今晩の献立を告げる。

「ハンバーグ」

「マジか!?私の大きく作れよ!あとデミグラソース作れよカナメ!」

目の前には年相応で容姿通りのサヤという女の子が晩飯のおかずに喜ぶ姿があった。

「あ、カナメ。サラダにブロッコリー入れるなよ。あれは食い物じゃねえ。森だ」

「何、その辺な例え?」


2───────3

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る