カナメとサヤの日常
華也(カヤ)
第1話
『カナメとサヤの日常』
著・華也(カヤ)
物語はいつも唐突に始まり、唐突に終わる。
誰もが予測できない。それが人生だ。
だから、自分の身の回りで起きた事象は、自分とは無関係とは言えない。自身が引き起こした事だと。
…そう片付けられるはずだったんだけど……例外もあるのかもしれない。
まだ、そんな事すら知らない、僕は子供だったんだ。
これは僕こと、"カナメ"とひょんな事から出会った少女"サヤ"の話だ。
そう。僕もこの話の当事者なんだ……。
───────
夢心地。
5月の陽気な陽を浴びて、うとうとと眠りを誘う。
現代社会の授業であるが、あまり興味もない。正直、過去の事に大して関心がない。日本史だろうが世界史だろうが、80年代、90年代、00年代だろうが、所詮は過去にあった偉人の偉業や凄惨な事件なんて知ってどうなる?
既にこの世にいない人間の人生を知ってどうなる?そんな人がいました。そんな事件がありました。可哀想ですね。これを教訓にして我々はどう向き合っていくか?そんなことは知らない。僕達にはこれからの未来っていうのが重要であって、特に興味もない。
もっと、未来のための授業をして欲しいと思いつつも、それを実際にされたからって、真面目に授業を受ける自分の姿は想像できない。どっちにしろ、うとうとと眠りにつくのだろう。
少なくとも、僕がどうあがいても、この教科書に載るような偉業や犯罪を犯すとは思えない。そんな大それた人間ではない事を、16年生きてきただけだけど、知っている。
自分の事を過大評価も過小評価もしない。
教師の言葉が、形を変えて、右耳から入り脳を突っ切って、左耳から流れ出す。次第に眠りに落ちていく。
毎回見る夢。
空から美少女が降ってきて、受け止めた僕は、非日常の世界へと踏み入れてしまう。彼女を追う謎の組織。この世界の裏の顔。彼女を守るために、僕は不思議な力を手にして、悪の組織と闘う。そんな三文小説。そんなファンタジー。そんな思春期特有の病気。そんな中二病。
誰だって男ならそこに夢を抱き、心踊る事だってあるだろう。
夢くらい見させて欲しい。
夢の中でくらい、非現実的な非日常を味わいたい。本当に目の前にそのような事が起きたら、自分はどうするのか?何をするのか?
そんなの考えるだけ時間の無駄。
今日も今日とて、いつもの日常を過ごしている。
……少なくとも、クラスの同級生や担任には表面的にはそう見えているはずだけど…。
そんなこんな夢の中で妄想を膨らませていたら、あっという間に学校は終わり、友人達とじゃあまた明日なと別れの挨拶を交わして家路に着く。
僕は学校が実家から遠かったので、一人暮らしをしている。勿論、親からの送金もあるが、アルバイトもして生活費を稼いでいる。
築30年。特別綺麗なわけでもなく、別にボロボロでもないアパート。家賃は4万5千円。まだ安い方を探せた方だ。学校も10分圏内だし、駅も歩いて15分ほどだ。
都内の進学校に行って一人暮らしをしている同中だった友達なんて、家賃5.6万が当たり前と言っていたので、自分はまだ恵まれている環境かなと思ったり。
そんな自分の家の2階の203号室、僕の部屋のドアの前で鍵を開けるのを一瞬躊躇するも、溜息を漏らすと同時に開ける。
開けるとすぐにキッチンが横にあり、その先の部屋では、テーブルに肘をつきながらテレビを見ている人物が1人。
そこには、僕の夢の中の妄想とはかけ離れていて、横暴な口調で命令する美少女がワイドショーを見ながら視線も寄こさずに言う
「カナメ、3時のおやつ食べたい。早く出せ」
そんな僕の夢や妄想を打ち砕く非日常が目の前には広がっているのだった。
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