No.135 分からなくもない
アメリアが王城侵入準備をしている頃。
ウィンフィールド国の王城で取り乱している王子様がいた。
その名はフレイ・ウィンフィールド。
彼は僕の親友であり、アメリア・ホワードの婚約者である。
「アメリアが失踪した!?」
「……フレイ。まぁ、そう慌てずに」
僕、ハオラン・ターナーはウィンフィールド国王城へ久しぶりに足を運んでいた。
案の定、この国の王子フレイは公爵令嬢アメリア嬢が失踪した知らせにより、柄になく動揺している。
先日、フレイが僕にアメリア嬢が以前彼の婚約者であったアメリア王女だという話をしてくれた。
しかし、僕は完全にアメリア嬢=アメリア王女であることを信じてはいない。
だって、あの怪物と気品で溢れる王女様だよ??
それが事実だとしてもなかなか信じられない。
普段なら完璧でいつだって落ち着いているフレイ。
しかし、今の彼は動揺を隠す気はなく僕の両肩を掴み揺らす。
「どうしよう……これは一大事だ」
「……そうだね。一国の公爵令嬢が失踪したのだからね」
「なんで君はそんなに冷静でいられるんだ??」
切羽詰まっているフレイは心中落ち着いている僕に訝し気な目で見る。
仕方ないでしょ。
だって、失踪したのはあの怪物令嬢でしょ。
怖いものなさそうじゃないか。
しかし、以前アメリア嬢は敵に抵抗できず連れ去られた前例があるので、心配がないというわけではないが。
「……フレイ、誤解しないで。アメリア嬢が心配でないわけではないから。ただ、彼女は……ほら強いからそこまで心配する必要もないのかなって」
「そ、そうだけど……心配なものは心配なんだ」
「……じゃあさ。僕らで探しに行く??」
「へ??」
そんな声を出さないでよ。
らしくないからさ。
フレイの珍しい驚きの顔に僕はついフフッと笑ってしまう。
「……心配なんでしょ。だったら、光も闇も主魔法にする彼女も君みたいに動揺してるんだ。そんな2人と僕で行けばいいじゃない??」
「彼女って……まさか」
「……エリカさんもらしくなくわんわん泣いていたんだ。みんな引くぐらい……」
一瞬、別人かと思ったよ。
「でも、アメリアがどこにいるかなんて分からないよ」
「そうでもないと思う」
「そうなの??」
僕がそう答えるとフレイはこちらに希望の眼差しを向けてきた。
彼も別人格があるみたいに思えてしまう。
「そうだよ。彼女なら知っていると思うよ」
アメリア嬢と仲がいい彼女なら。
★★★★★★★★
今日の海は大きく荒れていない。
天気もいい。
ただ、私の心はどうも曇りのようだ。
私、テウタは仕事場の1つであるウィンフィールド国の港にて仕事を行っていた。
アメリア・ホワードことアメリア・C・トッカータがホワイトネメシアの王城を訪れ失踪したという知らせを聞くなり、船を準備していた。
以前初めて学校に通った日にアメリアから紹介された彼女のスパイであるゾフィーから情報を得て、今奴隷の国セクエンツィアに向かおうとしている。
準備万端になり私が船に乗り込もうとした時、背後から声を掛けられた。
「どうも、テウタさん。すみませんが僕らも乗せてくれませんか」
そう話しかけてきたのはフードを深く被ったフレイ王子だった。
★★★★★★★★
突然現れた王子さんとその後ろにいた研究で優秀な成果を収めているハオラン・ターナーを仕方なく乗せ、船を出発させると、2人を案内し船の1室で事情を聞くことにした。
まぁ、何となく想像はついているが。
彼らは王城の者たちに黙ってきたのか、服装も地味なものを着用し、この部屋に入るまで顔を隠すようにフードを被っていた。
「それで……どうしたんすか。アメリアのことですか」
「そうだよ。君ならアメリアがどこにいるか見当がついてるだろうと思ってね」
「見当は付いていますよ。セクエンツィアにいると耳にしました。でも……なんで王子さんまで来てんですか。危ないですよ」
フレイは第1王子でないとは言え、研究大国の王子。
優秀な兄に劣らず自身の能力を発揮し国民からもなんだかんだ愛されている王子だ。
そんな王子さんが自ら危険が及ぶかもしれない行動を取っている。
「でも、アメリアの方が危険な状況にいるのには変わらない。僕はそのことに我慢できないよ」
あれ??
王子さんってアメリアにこんなにぞっこんだったけ??
噂で王子さんがアメリア
「しかし、向かうのは奴隷の国セクエンツィアすよ?? 悪いことは言わないので帰ってください。帰る用の船は今から用意しますから」
「帰らないと言ったら??」
王子さんは凛々しく真剣な様子で行きたい意思をこちらに訴える。
最近のアメリアと王子さんは友達のように仲良しに見えていた。
アメリア本人は嫌と言っていたが、まんざらでもない様子。
王子さんは前よりさらに彼女と関わりを求めるようになっていた。
だから、本当の婚約者でないといえども、友人であるアメリアが失踪してしまった王子さんの気持ちは分からなくもない……。
私は黙りこみ、数分間考えるとはぁと溜息をもらした。
「仕方ないっすね。王子さんはそんなに弱くないし、いいでしょう」
「おお!! ありがとう!! テウタさん!!」
私がそう答えると王子さんは満面の笑みを浮かべる。
この人、思った以上にイメージと異なる行動を取るな。
王子さんは以前戦った様子を見たところ、能力はかなりあり魔法も完全にお手の物であった。
でも、注意するのには変わりない。
「王子さん、あんたは一国の王子なんだから無茶はしないでくださいよ。あと、先々行くのも」
私はそう王子さんに忠告すると、王子さんよりも先に席を立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます