No.125 捕らえろっ!!
「王女殿下だとっ?!」
「トッカータ王国の王女様っ?!」
「アメリア様って……」
リッカの兄貴、サンディがうちの本名を口にすると他のシー族の人たちは驚いたのかそんな声を上げていた。
そんな周囲の様子にサンディもまた驚いていた。
なんでお前が驚いてんだよ。
お前がバラしたんだろ。
王女の頃から共に過ごしていたサンディがうちの本名を知らないはずがない。
知っているのは当然のことだった。
でも、なんでホワードの方の名前があるのに、バラしたんだよ。
苛立ちつつもうちは後方にいたリッカの方を見る。
「アメリアさんが……王女様……」
こんなやつが王女?? なんて思ったんだろうな。
リッカも衝撃を受けているのかうちと目を合わすが、何も言いそうにはなかった。
「アメリナ王女だって?? 本当なのかい?? サンディ君」
メガネのっぽはメガネの眉間の所を人差し指でクイっと上げ、サンディに尋ねる。
「ウソを言ってどうするんですか、先生。確かにアメリア王女殿下ですよ」
「うちはアメリア・ホワードだ。嘘を言うな」
「本人がこう言ってるよ、サンディ君」
「僕は殿下とずっといたんですよ。ずっと、見てきました。殿下はアメリア・ホワードであり、アメリア・ホワードは殿下なんです」
「でも、彼女はトッカータ王国の王族の最大の特徴の桜色の髪ではないけれど??」
「殿下は今魔法道具である指輪をされています。その指輪で髪型と色を変えているのです」
「それはまことか……?? サンディ」
先ほどよりだいぶ落ち着いたような長老はサンディに尋ねる。
サンディはニコリと微笑み「本当ですよ」と返した。
すると、長老は細い弱そうな腕を上げ、うちを指さす。
「王女を捕らえろっ!!」
えっ?? なんで??
「なんでですかっ?! 長老?!」
うちと同じく長老の言葉を理解できないサンディはうちと長老の間を挟むように立つ。
彼はうちを守るように背中を向けていた。
長老の指示により、近くにいたシー族の何人かはうちに槍を向けていた。
「お前は知る必要ない」
「なんでですか?! トッカータ王国の方々には感謝してきたじゃないですかっ?!」
「王女は違うっ!!」
「なんでっ?!」
サンディは長老の大声に負けずと叫び何度も「なぜ??」と聞く。
王女は違うってどういうこと??
うちって
会ったことないはずなんだが。
「サンディ君。これには事情があるんだ。だから、そこをどいてくれないか??」
「いくら先生の頼みでも僕は動けません。その事情を教えてくれるまでは」
「……分かった、話そう」
「ウィリアムっ!?」
「長老、もういいじゃないですか。彼に隠しておいてもいずれかは知られてしまいます。それに事情を聞いてサンディ君が納得すればいいじゃないですか」
「……そこに妹もいるのじゃぞ」
長老はうちの後ろにいるリッカをちらりと見る。
「リッカちゃんにもいつかは……。私は今言っておくべきだと思いますよ。どうも王女殿下も知らないようですし」
「うちは王女じゃない。アメリア・ホワードだ」
「殿下。これ以上ウソは無駄ですよ」
その瞬間、そう言ったサンディに手をパッと右手を掴まれた。
「何をっ!?」
「この指輪は今は没収です。僕がうそをついていないことを証明したいので」
うちの金のリングを外されると、そのリングはサンディのポケットへと消えていく。
一瞬で奪われてしまったため抵抗ができなかった。
「なんと……」
「……サンディ君の言っていることは本当だったんだな」
長老とメガネのっぽは驚いたように目を見開いていた。
視界にはピンクの髪がちらりと見え、自分の髪が変化していることに気づく。
クソっ……。
サンディめ。
「この通り、アメリナ王女殿下です。すみません、先生。お話を続けてください」
「ああ……」
周囲にいたシー族の人々も物珍しそうにこちらをジロジロと見つめていた。
ほんと、桜色の髪って目立つんだよ。
どんだけ煩わしいと思ったか。
ロング化した自分の髪をすっーと指の間に通す。
相変わらずサラサラだった。
背高のっぽメガネはコホンと咳ばらいをし、再び話始める。
「サンディ君。これから話すことは覚悟してくれ」
のっぽの目は真剣で、でもどこか冷たいような寂しいものを感じた。
「これから話すことは君の母上の最期だ」
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