No.122 大人しさ

「あれ、家の前騒がしくないか??」




ふと外から聞こえる音を耳にする。

エプロン姿のリッカも同じように気づいたみたいで窓の方を見ていた。




「まさか、姉さん本当に……」


「あ、ラヴィ姉がいるよ!! リッカ姉」




リッカの弟が窓の外を見て無邪気に指をさす。

眩しくなるようなにこっにこの笑みでこちらに顔を向けていた。


弟は純粋君だな。

それにしても……。




「お姉さん、どちら様??」

「この人、人間だわ。セナ」

「あ、ほんとね。レナ」




うちの周りで2人の少女がじっとこちらを見つめる。

この女の子たちはリッカの1つ下の双子。

2人の顔はそっくりなのだが、髪色どちらがどちらかはっきりしていた。




「どうも人間さん、私はセナ。黒髪の方が私よ」

「そして、銀髪の方がレナよ。銀髪の方ね」




真っすぐな瞳を2人ともこちらに向ける。




「「人間さん、よろしくね」」


「よろしく」




彼女らはリッカの妹たちということでもちろん耳としっぽがあった。

その耳はムーンライト犬に似ていたが。




「あなたの名前は何ていうの??」


「アメリア。アメリア・ホワード」


「あれっ。ホワード家の人だったの??」

「レナ。この人公爵家の人だじゃないの」

「私も知らなかったのよ」




と双子ちゃんは両サイドで自由におしゃべりをする。

姉のリッカと違ってどこかおばちゃん感を感じる。


近所の仲のいいおばちゃんみたいだな……。


そのおばちゃん感あふれる双子をそっと見ていると、リッカが外に行こうとしているのが目に入った。

うちもそのままリッカの開けた扉を通る。

すると、家の前にはたくさんの人がいた。

その中にはあごひげをかなり伸ばしたおじいちゃんがいた。


おばあちゃん(双子)の次はおじいちゃんか。




「リッカ。おはよう」


「長老様。おはようございます。どうしたんですか、こんな朝から」




驚いた口調で話すリッカは長老と呼んだおじいちゃんのところに階段を下りて向かう。

長老の周りには村の人たちが囲んでいた。

数人はうちに気づいたのかこちらを見上げる。

サンディもうちが出てきたことに気づいたようでうちの所に寄ってきた。




「あ。あの子です!! サンディです!!」




ラヴィ姉さんはサンディの方を指さし、それに合わせ集まった人の視線が集まっていく。




「あれがサンディだって??」

「おい。人間がいないか??」

「あの女の子、人間だわ。でも、見たことある気がする」

「あの犬。サンディにそっくりだな……」




村人たちは見るなり口々にものを言う。

うちを見る者もいればサンディを指す者もいたり。

みんなかなり混乱しているようだった。

そんな中、長老はサンディを見るなり、目を見開いていた。




「あ、あれはサンディじゃ……」




お肌しわくちゃのおじいちゃん 長老はこちらを指さし、そう呟いた。


はぁ??

何言ってるんだよ、長老。

コイツはお前らが思っているリッカの兄貴サンディではないぞ。


「コイツはリッカのあに……」




うちが否定しようとした時、遮るように村人たちが大声を上げ始めた。




「サンディを広場に連れていけっ!!」

「あの犬はサンディだ!! 助けてやるからな!!」

「おー!! あの坊主見つかったかっ!!」


長老の言葉に反応した村人たちはうちらの下に走ってきていつも以上に大人しいさんでぃを狩る妓、連れていこうとする。

人々はまるでお祭り騒ぎのように嬉しそうな顔をしていた。


え??


口を大胆に開け、そのノリについていくことはできず、ぼっーとしていた。

村の男どもは軽々とサンディを運んでいく様子を棒立ちのままずっと見つめる。

こちらに向けるサンディのオレンジの瞳は真剣で真っすぐだった。


なんでそんな目をしているんだ……??


リッカの家の玄関前で立つうちはサンディの姿が隣の家に隠れるまでずっとうちの体は動くことはなかった。

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