No.121 そんなわけないな

「サンディっ!? サンディじゃないのっ!?」




その大声によって目を覚ます。

木々に囲まれているせいか太陽の明かりは少ししか感じなかったが、朝になっていることは分かった。

振り子のように勢いよく上体を起こし、ベッドから出て、1階へと階段を駆け下りていった。

リッカはすでに起きているようで玄関前にいた。

彼女はドアを大きく開け、外にいる誰かと話している。

窓から外をちらりと見るとどうも家の前にいる女が大声を出していたようだった。




「ラヴィ姉さん、どうしたの??」


「いや、そこにサンディがいたから……」


「兄ですか……?? そのワンちゃんは違いますよ」


「いえっ!! その子はサンディよ!!」




うちはそのまま玄関に向かい、外に顔を出す。

すると、ラヴィ姉さんと呼ばれた女はギョッと顔をしていた。

また、金髪の彼女にもまた可愛いらしい耳が付いている。




「その子なに?? 人間じゃないの」


「えーと。ホワード家のアメリアさん。森で会って泊まるところがないようでしたので、お部屋をお貸ししていました」


「ホワード家のお嬢さんだったの」


「どうも、アメリアっす」




うちはつい前世での姉御たちに出会った時の挨拶をしてしまう。

ラヴィ姉さんは次はムッとしてこちらをぎろりと見つめていた。




「ホワード家のお嬢さんだからと言って簡単に村にいれたらいけないよ。まぁ、今回は見逃してあげるよ」


「ありがとう、ラヴィ姉さん。それで、このワンちゃんが兄だというの?? 姉さんは」




ラヴィ姉さんはリッカの質問にうんうんと腕を組み頷く。




「そうよ。私、サンディが消えるまではずっと見てきたのよ??」


「それなら私も同じだわ、姉さん」


「でも、あんたは変身じゃないときの姿でしょう?? 私は仕事上変身姿のサンディを見ることが多かったの。そんな私が言うんだから間違いないっ。ちょっと、長老を呼んでくるわ」


「えっ。ちょっと姉さん」




リッカが呼び止めるも、ラヴィ姉さんは颯爽と村の中心へと走ってゆく。

ベランダの方に目をやるとサンディは今の会話で目を覚ましたのかちょこちょことこちらに歩いてきた。

うちは手を伸ばしサンディを撫でてやる。




「お前が人間だっていうやつがいるぞ」




サンディはうちの手を頬に当てようとするが、うんともすんとも言わない。

ただただ撫でられるのを気持ちよさそうにするだけ。




「お前が人間なわけないよな??」


「ワンっ」




しっぽを振りつつジャンプをする。


コイツが人間だったら本当に笑うんだけど。





















いや

















待てよ。




















コイツが人間だったら




















うちの行動をだいたい見られていたことに……??


うちはコイツに体を寄せて寝ていたりしたのか??
















「ハハハッ。そんなわけないな」


「何がそんなわけないんですか??」


「こっちの話。さ、朝ごはんでも作るか」


「ええ。そうしましょう」




うちはサンディをうんと撫でてやると、リッカとともに家に戻り、朝ごはんを準備し始めたのだった。

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