No.117 どちらでしょうか
アメリアがホワイトネメシア国に着いた頃。
フレイは急いである者の研究室に訪れていた。
「……どうしたの、フレイ
「君にその呼び方をされるのは非常に違和感があるな、ハオラン」
「……たまにはいいかなと思って」
ハオランの研究室に訪れると彼は机に向かって物を何か書いていた。
机にはたくさんの紙と本が山積み。
きっと何時間も机に向かっていたのだろう。
フレイはハオランに休憩がてら例の話をすることにした。
ハオランは自分の机から離れ、ソファに座ったフレイに向き合う。
「……で、どうしたの、フレイ??」
「それが……」
フレイは昨日起きたこと、アメリアについて親友ハオランに話すと、話を聞くなり彼は温かなコーヒーが入ったカップを持ったままフリーズしていた。
「おーい。ハオラン。聞こえてる??」
「……あ、ごめん。ちょっと信じられなくて」
「やっぱり信じられない?? じゃあ、あれは僕の夢だったのかな……」
とフレイが自信なさげに言うと「いや、違うんだ」とハオランは話を続ける。
「信じられないというのは気品がありこの学園の女子も憧れるあのアメリア王女と怪物令嬢ともいわれるアメリア・ホワードが同一人物とは思えなくて……」
「はぁ……」
「だって、そうでしょ。何をしだすか分からない予想不可能、そしてとんでもない能力を持つ令嬢……アメリア嬢だよ。誰もあの王女様とは一緒だとは思わない」
「まぁ、確かに」
ハオランはやっとカップの縁を口に当て、少し冷めてしまったコーヒーを飲む。
向かいに座るフレイは腕を組み、今までのアメリア・ホワードの言動を思い出していた。
思い返せば思い返すだけアメリア・ホワードとアメリア王女は顔が似ているなと今さらながら気づく。
「でも、アメリア嬢が指輪を付ける前はアメリア王女と同じ姿だった。そして、今のアメリア王女は重病で一切の人間関係を断っている。だから、アメリア・ホワード=アメリア王女というのはフレイが見たことが夢でないのなら本当だと思うよ」
「でも、アメリア・ホワードがアメリナ王女として僕はどうしたらいい?? 今、彼女はホワイトネメシア国に行っているだろう」
「……それは心配で??」
「そうだよ」
ハオランははぁと呆れたようにため息をつく。
そして、またコーヒーを口へ運んだ。
「アメリア嬢は建前上ではあるけれどフレイの婚約者でしょ。心配なんてすることはないよ。ニト王子はアメリア嬢をやたらと口説いているようだけれど、他国の婚約者を奪うような非常識なことをする頭のない人ではないとおもうから大丈夫だよ」
「いや、そうじゃなくて……」
「ああ、そういや君は王女様が近くにいないと気が済まない人だったね。相変わらず君の溺愛っぷりには感心するよ」
ハオランはフフフと楽しそうに笑っているが、フレイは取り乱したように「あーもう」と頭を抱える。
一時笑うとハオランは「それにしても……」と話を切り出す。
「アメリア嬢はどっちが本当の姿なんだろうね」
そのハオランの一言でフレイの悩みが1つ増えたのだった。
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