No.116 少女の頭には

王城から逃げ出したアメリアはホワイトネメシア国の森をサンディとともに駆け抜けていた。

北国ということもあって、森の中も白い雪で積もっていた。

動物たちは冬眠しているのか、それとも夜だから寝ているのか姿は見えない。


逃げ出したものの、うちには行く当てがなかった。


そうして、静かな寂しい森をかけていると、開けた場所に出てきた。

ようやく青白い月が見える。

アメリアたちが足を止めた場所は池のようだった。

しかし、冬で寒いせいか池の水は完全に凍っている。

サンディの上に乗っていたうちはジャンプして降り、池の方に近づく。


かちんこちん……。


凍ってしまった池を叩いてみると意外と分厚いのか割れることもなかった。

下げていた顔を上げ、池全体に目をやると、人が1人いることに気づく。


こんな夜中に一体誰が……??


うちは寄ってきたサンディを優しく撫でつつ、目を凝らして人の方を見つめる。










































女の子??

























それも耳のある子??
































ふぇ??






















そこにいたのは人の姿をしているが、頭から猫の耳のようなものを生やした少女がいた。

彼女は何を願っているのか、月に向かって懇願していていた。





「ど、どうか。お兄ちゃんが無事でありますように」





月に向かって願いを言っている。


兄貴か……。


あの少女はきっと兵士などで出ていった兄の無事を願っているのだろう。

でも、あの耳がある人間って……。


うちがその少女に声を掛けようとした瞬間、うちよりも早く少女の方に駆け出す。




「サンディっ!!!」




サンディの方に手を伸ばすが、サンディは凍った池の上を走り、そのまま少女の方に走っていく。


アイツ、女の子こと、まさかだけど獲物とかに見えていないよなっ!?


うちもサンディを追いかけるように駆け出す。

少女は突然自分の方に向かってくる巨大犬にびっくりしたのか目を丸くしていた。




































「サンディ………??」




























少女はうちが叫んだ愛犬の名前を小声で言う。






























「お兄ちゃん??」
















少女は向かってくる犬に向かってそう言った。

すると、少女の目の前までやってきたサンディは足を止め、少女の方に向いてお座りをした。

サンディは喜んでいるのかしっぽを振っている。

少女は困惑しながらもサンディの方に寄っていた。




「まさか……本当にお兄ちゃんなの??」


「ワンっ!!」




やっと向こう岸まできたアメリアは少女の方に足を進めていた。

近づくうちに気づいたのか少女はこちらに目を向ける。




「あ、あの。あなたはこの犬の飼い主さんですか??」


「ああ。そうだが」


「さっき、この犬の名前をサンディとお呼びされました??」


「ああ。それがどうかしたか??」


「い、いえ。この犬の名前と兄の名前が一緒だったもので……」




少女はそう言うと寂しそうな瞳で犬を見る。

彼女の耳もまたしょんぼりと曲がっていた。




「その耳……」




うちがそう呟くと聞こえたのか、少女は「これですか??」と自分の耳に触る。




「こういう人見たことがございませんか??」




彼女はフフフと柔らかな笑みを見せつつ、耳を動かす。

















































「私、動物人間の種族シー族なんです」




!?


シー族だって?!

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