No.115 真夜中の客人

「ん……??」




眠りについていたアメリア。

しかし、真夜中に何やら物が当たる音が聞こえ、目が覚めていた。

その音はごくわずかな物だったが、うちには確かに聞こえていた。


いつも寝ていても聞こえない音。


気になったうちは上体を起こすとベッドの前に人のシルエットが見えた。






















誰かいる……。





そのシルエットからは少し体つきがよさそうに見えたので女性には見えなかった。


男、つまりティナではない。

一体誰だ??


一瞬でシルエットから身内でないという予測を立てたが、相手はじっとしているわけでもなかった。

そいつは突然うちのベッドの方に飛んでくる。

うちは瞬時に飛ぶように起き上がりベッドの上に立ちあがる。

そして、敵の正面にバリアを作り出した。


ばーか。

うちにはバリアがあるんだよ。


男がバリアにあたった瞬間、うちが作ったバリアは消失する。


なっ。


同時に男がフードをかぶり、こちらに青い瞳を向けているのが分かった。

その瞳にはとても見覚えがあった。

うちはそのままその男にベッドの上で押し倒される。

気づけば首元にナイフ。

そして、男がこちらに顔を見せていた。




「ランバート王子……」


「やぁ。どうも」




うちを押し倒し、こちらにナイフを向けているのはホワイトネメシア国の王子ランバートだった。

彼は昼間に見せた表情とは違い、まるで悪党丸出しの顔だった。

それも質の悪い悪党。




「なんであんたがこんなことしてんだよ。暗殺者なんていくらでもいるんだろ」




この感じはうちを確実に殺しにかかっている。

どういう理由化かは知らないが、うちが気に食わないんだろうな。




「暗殺者?? 僕が君を殺しに来たとでも勘違いしているのかい??」




彼は小ばかにしたように鼻でフフっと笑う。




「王女の君を殺すわけがないだろう。しかも、トッカータ王国の王女だ。絶対ない」


「それならなんでここに来た?? こんな時間に」


「それは君と交渉しに来たのさ??」


「交渉??」




彼は上機嫌なのかうんうんと頷く。

うちは首元に置かれているナイフをどうにかできないかと目を動かしたが、ランバートに『僕の話を聞いてよ』なんて言われ、強制的に聞かされた。




「君さ、バリア魔法を主魔法としているだろう??」


「……ああ」


「僕はね、そのバリア魔法が欲しいんだ」


「はぁ……」




この人なに言ってるんだ??




「だから君さ、僕の部下にならないかい??」




はっ??

ほんと何言ってんのコイツ。

そんなの……。




「嫌に決まってんだろ!!」


「ふーん。君、今の状況分かっている??」




そんなの分かってる。

ランバートがナイフを動かせばうちの首はすぐに吹っ飛ぶ。

しかも、なぜだが知らないがコイツにはバリアが効かない。


でも。




「おりゃっ!!」


「うっ」




うちは自由に動かせる足を使い、ランバートのお腹を思いっきり蹴り上げる。

いい場所に入ったのかランバートは痛そうにしていた。


コイツは王子。

ハハハッ。
























やっちまったなぁー☆☆




ランバートをベッドから出すとうちはすぐにバッドとコートを持ち、ベッドから降りる。

そして、すぐに窓方に向かう。


ここにいたらしっかり睡眠がとれる気がしない。

うちは質のいい睡眠が欲しいんだっ!!

じゃないと頭が働かないだろっ!!


窓を開け、外に裸足で踏み出す。

さすが北国。

風は少々であるが寒いのには変わらなかった。

素足でずっといたら凍傷しそうな冷たさ。

それでもアメリアは外に行くと決めた。




「サンディっ」




うちは2階の窓を飛び出すと同時に愛犬の名を叫ぶ。

すると、待ち構えていたかのようにすぐにやってきた。




「よし!! えらいぞ!!」




うちは上手いこと着地をし、サンディの上に乗る。

サンディの頭をわしゃわしゃと思いっきり撫でてやり、うちはべた褒めをする。




「サンディ、ここから離れよう」




アメリアはそう言うとサンディとともに雪で白くなった王城を飛び出し、見知らぬ森の中へと入っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る