No.114 ついていたのだけれど

「久しぶりね。アメリア」




目の前に見えているのは以前トッカータ王国実家でともに過ごしていた姉 アメリナ。

うちと名前が似すぎてよく間違えられることが多かった姉の1人である。

因みに彼女はぶっ飛んだシスターズ略してBSの1人でもあり、その名前の通りとにかくやることなすことかなり常識から外れたところが多かった。


まぁ、それは家族内のことではあるけれど。


アナ姉は表、つまり国民の前や式典の際はまだマシな常識王女として顔を出していた。

あの時の姿はまさに別人。


アナ姉の明るさはどこ行っても変わらないようだけど。


そんな姉がなぜか北国であるホワイトネメシアの王城にいる。

まるで当たり前かのように。




「アナ姉……。なんでここに……」


「アメリア。私ね、この国の王子 ランバート王子と婚約することになったの」


「こんやくぅー??」




アメリアは信じられないあまり酔っぱらったおっさんのような声を出す。


アナ姉が婚約だって……??































はっ。

























どうせ冗談でしょ。

アナ姉のことだもん。






「アナ姉、そんな冗談はよして……」


「冗談じゃないよ」




そう答えたのはアナ姉とは別の人。

少し低いアルトの男の声。

気づかない間にアナ姉の後ろには銀髪の青年が立っていた。

その髪は自然の絹のようにサラサラで、彼の瞳は青く透き通っていた。

彼はうちにニコリと笑みを向けてくる。




「どうも。初めましてだね、アメリアさん・・


「はぁ……?? アンタはどちら様??」


「お久しぶりです。兄上」




ニトは同じ銀髪の彼に挨拶をする。

よく見ると彼らは目も髪もそっくりでただただ身長が異なるだけだった。


ちょいまて。

今、ニトは兄上って言ったか??




兄上……??




再確認したいうちはもう一度銀髪の彼の方に向く。

すると、完璧そうにみえる彼はまたニコリと笑ってきた。


完璧……。




「ホワード侯爵令嬢。僕はアメリナ王女と婚約したホワイトネメシア国第1王子ランバートです。あなたと彼女は昔から仲がよいと聞きました」




コイツとアナ姉が……。

婚約ぅ……。


絶対政略結婚じゃねーか。

てか、アナ姉。

ノアはどうしたんだよ。

うちはてっきりノアを婿にすると思っていたよ。


うちは心中で深いため息をつく。

そして、ランバート王子の方に警戒しつつ目を向け、ほんの少し観察をした。


しかし……、

どうも彼の笑みには少々違和感を感じる。




「いや、違うか……」




彼は「ふーん」とわざとらしく考える態度を示し、またこちらに顔を向ける。

その表情は悪魔のような質の悪そうなものだった。




「アメリア王女様。よろしくお願いしますね」




コイツ……。

知ってんのかよ、うちのこと。


ランバート王子に警戒心を高めていたアメリアは「どうも」とだけ挨拶をするのだった。




★★★★★★★★★★




「はぁ……」



案内された自室に行ったアメリアはベッド上で寝転び再びため息をつく。

そして、そっと目を閉じさっきの出来事を思い出す。


まさか、アナ姉がいるとは……。

しかも、ホワイトネメシアの第一王子と婚約とか。


一体誰が予測できただろうか。

少なくともうちは予測できなかった。


だって、アナ姉が婚約するイメージなんてないんだもん。


みんなだってないでしょ??




「ほんとなんなんだよ……」




少し重くなっていた瞼を開ける。

そして、寝返ると窓から外の様子を見えた。

外には雲が広がり少しではあるが雪が降っていた。

部屋の中は暖炉の音のみ。

部屋は静かだった。


そうだよな。

予想外のことが起きたってうちには関係ないはずだよな。

うん。

よし、明日ニトを連れて貴重な鉱物や植物とかを集めてやる。

ここにはそのために来たんだ。


そう決意したうちはもう一度目を閉じ寝ようとしたが、先に来ていたティナに起こされその後いつも通りに過ごしちゃんと夜に眠りについていた。












ついていたのだけれど……。

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