No.112 自由人
「え??」
うちの服を引っ張るサンディ。
その顔からは何かを訴えているようだった。
何も言ったりしないがサンディの言いたいことは大体予想がつく。
サンディの口を服から離し、うちはもう一度サンディを撫でてやった。
「お前も行きたいのか……??」
フワフワした白い毛を優しく撫でながら尋ねると数秒経ってから「わん!!」という返事が返ってきた。
あー。
可愛い。
「よしっ!! 一緒に行くかっ!!」
仁王立ちをして腕を組み、笑いかけるとサンディはしっぽをフリフリさせて飛び跳ねていた。
超大型犬であるため、ジャンプを繰り返すサンディの近くの地面が揺れる。
「最近、お前と遊ぶことがなくなったもんなっ!! いっぱい遊ぼうなっ!!」
そして、サンディと一緒にホワイトネメシア国に行くため、うちはさっそくサンディの準備もし始めた。
学園を出る30分前に気が弱ようなニトの従者が、
「そちらのアメリア様のご愛犬でホワイトネメシア国にですか……。いくらなんでも一国のご令嬢を1人で参らせるのは少々危険かと……」
見た目に反ししつこくうるさく言ってくるので、
「うるさい。うちはそんなか弱くない。ニトにも言っとけ。うちはサンディと行くから先に王城で待ってろってな」
と言い返してやった。
サンディの荷物が整い、うちの荷物を別にホワイトネメシア国に向かう馬車に積み込ませると、うちはサンディとともにホワイトネメシア国の王城へと出発した。
★★★★★★★★★★
一方、ニトの自室では……。
「えっ?? アメリアが1人で行く??」
ニトは思わず不意打ちを突かれたような表情をする。
彼は一時言葉を失い、口をパクパクとさせていた。
しかし、数分経つと諦めたようにはぁとため息をつく。
「ええ。それは危険ですとは言ったのですが……、アメリア様の犬と行くと言い張りなさって……」
「……そうか。まぁ、いい」
「いいのですか?? 彼女は公爵令嬢ですよ??」
ニトは従者に青色の瞳でニコリと笑いかける。
「彼女は自由の身である方があっているんだよ。好きにさせよう」
★★★★★★★★★★
うちとサンディは朝日が顔を出す前に出発すると最短ルートである森を駆け抜けていく。
幸い空には雲はなく雨が降る様子もなかった。
通り過ぎていく葉っぱには朝露。
うちは冷たい風を感じながらサンディの毛を撫でる。
本当にフワフワだな……。
サンディは久しぶりに伸び伸びと走ることができたためか嬉しそうにしていた。
始めははしゃぎすぎて寄り道とかして人を驚かしていたが。
ティナとかに怒られそうだけど……。
サンディが楽しそうならいっかっ!!
うちはサンディに王城の方を教えながらこぼれ日の中を走り抜けた。
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