No.111 見つけた
「……」
あれ……??
目の前に見えるのはいつも毎朝見る天井。
横を見ると、窓から入り込む眩しい朝日。
フレイは上体を起こし、自分がどこにいるかゆっくりと確かめる。
「おはよう、フレイ」
起きた僕に声を掛けてきたのは従者のスキルニル・レーヴァテイン。
彼は従者で、ハオランと同じく僕と付き合いは長い。
そのため、今のように敬語は使うことは公の以外の場ではほぼない。
僕が敬語は使うのは止めてくれって言ったのだけれど。
自分の足を布団から出しつつ、スキルニルに話しかける。
「今日は少し寝坊してしまったな」
「寝坊……寝坊か……」
「どうしたんだ?? ニル」
ニルがなんとも言えない表情をする。
彼は腕を組み、こちらをじっと見ていた。
「フレイ。君はどのくらい寝ていたと思う??」
「……7時間ぐらいだろう??」
僕は確か昨日の夜、池に行っていた。
朝にアメリア王女が現れたという噂を聞いて、僕は真っ先に向かったが、結局ピンクの髪の少女の正体はサイネリア国の令嬢ゾフィーだったらしい。
トマスとアメリアの勝負の時だってそうだが、相変わらず彼女は何かを起こすのが好きらしい。
困ったものだ。
それでもいないかと気になった僕は書類整理に疲れていたのにも関わらず池に足を進めていた。
誰もいないだろうと思っている先にフードを深く被った人がいた。
声を掛けると返ってきたのは聞き覚えのある女性の声。
そこにいたのは世にも珍しいバリア魔法を持つ怪物少女アメリア。
彼女は冷たいであろう池に足をつけ、何か探っているようだった。
僕は不思議にも手伝う気になり、足を水につける。
始めは冷たく感じたが、徐々にその冷たさが気持ちよくなりアメリアの方に向かう。
彼女は僕が近づくことをかなり嫌がっているようだったが途中から諦めて指輪を探していることを教えてくれた。
そうして、1時間2人で指輪を探していると彼女が突然叫んだ。
何かと思って彼女の方を向くと、指輪を持つ右手を空に上げていた。
嬉しそうな顔をして。
指輪は月の明かりでキラリと光る。
その指輪をつけると彼女はこちらに向いた。
その瞬間はらりと脱げていくフード。
無邪気に笑う桜髪の少女がそこにはいた。
夢のようだった。
にわかに信じがたいことであったが、病気で苦しんでいると思っていた彼女が元気に笑っているのだ。
彼女の左手には見つけたばかりの金の指輪。
「僕も……見つけたんだ」
「?? どうしたんだい、フレイ?? 君が3日間眠っていたことに気づいたのかい?? さすがだよ」
「え??」
3日間眠っていた??
僕が??
ニルはやれやれと言いたげな表情で両手を上げる。
「ったく、君は無理をしすぎていたよ。アメリア王女のためとは言え、働き過ぎた。陛下もかなり心配していたようだったし。これからはきちんと休みを取ることだね」
「ああ……」
僕は拍子が抜けたような声で返事をする。
確かにアメリアを見つけてからの記憶が僕には全くない。
僕は無理をしていていたのか。
フレイはベッドから腰を上げ、ニルに着替えを用意してもらう。
アメリアに会ってからあの日から3日経っている。
3日??
「……ニル、今日は何曜日だ??」
「今日は土曜日。休日だよ。お休みだよー」
土曜日……。
「土曜日だってっ!!!???」
「えっ!? 急に大声を出してどうしたの?? 君らしくない」
土曜日。
つまり週末。
『週末?? うちはニトと一緒に
アメリア・ホワードはアメリア・C・トッカータ。
彼女の週末のお出かけはつまりニトとのデート。
「デートっ!?」
「えっ。フレイ、今日はデートの日だったの??」
「違うっ!! ニトとアメリアだよっ!!」
「あの人はいいんじゃないの?? 見かけ上の婚約者でしょ??」
ニルはきょとんとして疑問を抱いているようだったが、黙っていると徐々に彼の顔がにやけ始める。
「えー。まさか、フレイ君アメリア嬢のことを本気で好っ…フグッ」
フレイは言いかけたスキルニルの口を押える。
アメリアは好きも何も、
昔から愛していた人だったんだよ。
そのまま改めてアメリア王女が自分の婚約者に変わりないことに気づいたフレイは赤面してしまいスキルニルにさらに勘違いされた。
あながち間違いではないのだけれど。
★★★★★★★★★★
疲労が溜まり熱を出してしまったフレイが目を覚ます数時間前。
朝日が出ない時間帯にアメリアは愛犬サンディの小屋に来ていた。
こんな朝早く起きていたのはニトの国 ホワイトネメシア国に行くためである。
「サンディ、悪いな。ちょっくら出かけてくる。月曜には帰ってくる」
「クゥーン……」
うちがそう言うとサンディは寂しそうな目をこちらに向ける。
最近、思うけど……。
サンディ、本当に可愛いなぁ。
サンディの可愛さにうちはそっと頭を撫でてやると幸せそうな顔をするサンディ。
数分撫でると手を離し、「じゃあ」と言うとうちは背を向ける。
その瞬間、急に後ろに引っ張られる。
「え??」
後ろを振り返るとサンディがうちの服を口で加えて引っ張っていた。
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