No.110 熱
「おーい?? フレイ?? 返事しろよー??」
アメリアは静止しているフレイの顔の前で手を振る。
しかし、彼が動く様子は全くない。
人形のようにこちらを真っすぐに見つめるだけ。
何なんだ??
「おーい。これ、もしかしてお前の指輪なのか??」
「……ち、違うけど……」
「そうか」
疲れたのか……??
フレイのことを若干気にしつつ、目的のものが見つかったうちは足がもう限界まで来ていたので八つ橋の方に歩いていく。
髪はいつも通りに戻り、視界の中に白髪が見えていた。
やっぱ、ショートの方が動きやすいや。
そうして、フレイの横を通り過ぎようとしたとき、左腕を掴まれる。
??
振り向くと、悲しそうなけれど、どこか安心しているような表情をした彼がいた。
今にも泣きだしそう。
「おいおい。この指輪がお前だったのなら正直に言えよ。そんなに泣くこともないだろ」
体の正面をフレイの方に向けると、うちはフレイの右手を離す。
「指輪は僕のじゃない……」
フレイは少し自信なさげに答えると黙った。
そのちょっと沈黙の中で寒々とした風が吹いていた。
うちはフレイが何を考えているのか見当もつかず、首を傾げる。
じっと彼を見つめていると、彼はうちの手を取った。
「は??」
うちの視界にフレイはいない。
フレイの腕がうちの背中に回っている。
「おい、フレイ……」
「いたんだね、いたんだ……」
「はぁ??」
彼の声はどこか安堵しているように思えた。
そして、うちをぎゅっと抱きしめていた。
息ができなくなるくらいぎゅっと。
苦しいんだが……。
「おい、何してんだよ……」
フレイの体を引きはがそうとしたとき、急にフレイに力がなくなっていることに気づいた。
そして、彼の体重がうちの方にどっしりとやってくる。
アメリアは突然ではあったが、フレイの体を支えてやった。
急に、どうしたんだ……??
「アメリア、つめたぁーい」
「へ??」
フレイは急に甘ったるい可愛い声を出す。
うちはいつもと違う変人化したフレイの顔を見ると暗いためはっきりとはしないが、頬が少し赤くなっているような気がした。
それに加えて彼の体は少し熱っぽく感じた。
……。
「あの……。フレイさん??」
状況が把握できていないうちはいつもより丁寧な言葉でフレイに尋ねてしまう。
すると、彼はなにやら嬉しそうに満面の笑みを見せてきた。
「なんだぁーい?? マイハニー」
「……」
おい、お前は誰だ??
「お前、熱あるだろ??」
「そんなー。熱なんてないよぉー」
「いや、あるな」
フレイが風を引いていると判断したうちは彼を横抱きにする。
男子だから重いかもなと思っていたが、そこまで重くはなく軽々とお姫様抱っこができた。
不思議にもフレイは抵抗などはせず、むしろお菓子を貰った子供のごとく喜ぶ。
なんなんだよ、こいつ……。
調子が狂うな。
「はぁ……」
「どーしたの?? アメリアちゃん♡」
うちが思わずため息をついていると、女子みたいな仕草でこっちになにやらアピールをしてくる。
両手を胸の前で合わせ、ウルウルした瞳をこちらに向けてくる。
なんで変なアピールしてんだよ。
てか、
お前、若干オネエ入ってるじゃねーか。
うちは予想もつかないフレイの行動に疲れ果てつつも、フレイをしっかりお姫様抱っこをして彼の自室まで連れていった。
フレイを連れて行ったとき、あいつの従者にめちゃくちゃ謝られたけど。
うちは「お大事に」と声を掛けるとその場を去り、自室に戻った。
でも、指輪が見つかってよかった。
本当に良かった。
うちは明日からいつも通りの生活に戻れると思うと、嬉しくて仕方なくて寝れなかった。
テンションが上がって本を読んでいるとティナに怒られたので結局ちゃんと寝た。
週末にはニトの国に行ける。
どんな鉱物があるんだろうか??
妖精の島に行った時のように物珍しいものがたくさんあるんだろうな。
ああ、週末が楽しみだな。
そう思いつつアメリアはそっと目を閉じた。
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