No.98 悪魔の姿

エリカはアメリア様と悪魔に囚われた女王様に向かって真っすぐに右腕を伸ばし、手のひらを見せる。


アメリア様に当てないようにしないと。

女王様に確実に当てないと。


私は右腕に光魔法を宿し、光玉を大きくしていく。


女王様を助けないと……。




私、エリカがこの王城に入り込むまでの間、偶然再会することができたルースから話を聞いていた。

妖精の女王と話したこと。

女王が悪魔に囚われてること。

女王は悪魔ごと消してほしいと願っていること。

全て聞いた。

その時、私は衝撃のあまり何も発することができなかった。

でも、ある1つのことを思いついた。




「ルースさん、悪魔って光魔法が嫌いでしたよね??」


「うん。そうだけど……」


「それなら私に任してくれませんか?? 私なら女王様をきっと救えるはずです」




私は光魔法を主魔法している。

他の魔導士より光は得意だ。

本でしか読んだことがないけれど、光魔法なら悪魔に対抗できる。

でも、私は悪魔なんて相手をしたことがない。

自信はなかった。

けれど、やらなきゃ。

































この世界が平和にならない。

アメリア様の幸せが守れないわ。




「悪魔さんっ!! さよならっ!!」




エリカは掛け声とともに光玉を女王に向かって放つ。

光玉は結構なスピードでストレートに飛んだ。




「なっ?!」




女王はアメリア様がいるせいで動けない。

逃げられない女王の紫の瞳は驚きと諦めが見えた。


当たれっ!!


光玉は真っすぐに女王に向かい身動きが取れない女王に見事当たった。

光玉が当たった瞬間、女王の体は輝き始め、また、すぐ隣に闇のようなものが現れ始めた。

光に慣れている私でさえ眩しく、目を手で隠す。

光は部屋いっぱいに満ちた後、徐々に弱まり次第に輝きを失っていった。


女王は……??


目を塞いでいた手を戻し、私は女王がいた場所を見る。

そこには金髪の女性と黒髪の女性が横たわっていた。




「う゛うん……」「ん゛うぅん……」




2人は気を失っている様子はなく、すぐに自力で立ち上がった。

金髪の女性はさきほどの女王の姿で、黒髪の女性は布が少なめのドレスを身にまとっていた。

しかし、そのドレスは光魔法のせいか多数の位置に穴があき、燃え、ボロボロになっていた。


黒髪の女性がきっと悪魔……。

女性だったんだ……。

それにしても、肌の露出が高い服ですわ。


女王様はとてもぐったりして疲労しているようで、アメリア様が「おい、大丈夫か??」と声を掛けていた。




「ええ、大丈夫ですよ。それよりも……」




女王は正気を取り戻したようで、悪魔の方をちらりと目を向けていた。

アメリア様も気づいたようで、悪魔の方を向く。

そのアメリア様の瞳はぎろりと睨んでおり、私はとてもかっこよく見えた。


はぁ……。

アメリア様、かっこいい女性№1ですわ。

本当にかっこいい……。


私は他の音が聞こえなくなるぐらい夢中になってアメリア様に見とれていた。

そうしていると、アメリア様が私を呼んだ。




「おい、エリカ。あの悪魔に最期の一発を食らわせてやれ」


「はいはぁーい!!!」




アメリア様に名前を呼ばれて嬉しくなった私は元気よく返事をし、悪魔の方に手を向け、光玉を作る。

黒髪長髪の悪魔はこちらを警戒しているのか腰を低くし身構えていた。

私は彼女のピンクの瞳で睨まれる。


そんなの怖くありませんよ。

こっちにはアメリア様がいますから。




「今度こそ悪魔さん、さようならっ!!」




私が光玉を放とうとしたとき、窓の外の方から男性の声が聞こえてきた。

























「あらあら、シトリー様。どうしたのですか?? その見苦しいお姿」

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