No.57 騒がしいティータイムにお邪魔します
「テウタさん、あそこに本当にアメリアが乗っている船があるの?クリスタは魔王城近辺にいるって……」
テウタが指さす暗闇の中には船らしきものは見えず、フレイは首を傾げていた。
すると、起動させっぱなしのパソコンから声が聞こえてきた。
『あーのー。フレイ様、非常に申し訳ないのですが……』
「なんだい?クリスタ?」
『コイツやらかしました』
「え?」
『お兄様は黙っていてくださいませ。えーと、フレイ様。私どもが仕組んでいた位置発見機なんですが、ナイル様に外されていたようです……』
「何っ!?」
クリスタが説明するには、
ファン一同が仕組んでいた位置発見機は外されており、クリスタが確認した限り全ての発見機が魔王城周辺で確認されていたらしい。
つまり、気づいたナイルが発見機を利用して、僕らを惑わしていた。
きっと、そうだろう。
何も感じない僕にテウタは再度指をさし説明してくれた。
「根拠はありませんが、確かにあそこから何かを感じるんですよ。王子さんも何か感じませんか?」
「いや……」
「まぁ、とりあえず行きましょう。アイツらのことは
根拠のないテウタの言葉にフレイはふふっと笑った。
「そうだね。友人を助けないとアメリア王女を悲しませてしまうからね」
★★★★★★★★★★
アメリアが横抱きで運ばれているとき……、
「エリカさん、外の空気はどう?」
「……」
「だんまりはあんまりだよ、エリカさん」
船の上では2人がお茶を楽しんでいた。
いや、1人だった。
もう1人は正面にいる男を睨んでいた。
その睨んだ目をしているエリカは大ファンのアイドル、ナイルともに外のベランダにある椅子に座っていた。
目の前にいるナイルは楽しそうにお茶を飲んでいる。
一方、エリカは椅子に座ってはいるが、身動きが取れない状況にいた。
それもそう、体はしっかりロープで椅子に固定され、体に力が入らないように何かしらの呪文を受けていた。
「アメリア様は……どこですか」
荒げることはないがエリカの声からは怒りがあふれ出ていた。
「カンデラと別の部屋に行ったよ。それよりも他の話をしよう?ね?」
「カンデラ……あの青髪の人ですか。アメリア様に何をするつもりですか?それを答えてくれないと他の話などしません」
「僕がそのことを話したらいいんだね?」
「ええ。アメリア様が無事であることが分かれば」
「ふーん」
ナイルは手前にある鉄製のガーデンテーブルに肘をつき、エリカに笑顔を見せる。
「カンデラはアメリア嬢の記憶を消すんだよ」
「!?」
「そんでもってあの2人は婚約するんだよ」
「何言ってんですかっ!?アメリア様はフレイ様と婚約して……」
「でも、記憶をなくしたアメリア嬢は……別の人になるんだよ。そのころにはアメリア嬢は王子のことなんて愛していない」
「アメリア様ははなからあんなやつのことを愛してませんっ!!」
「……言うね」
「そうじゃなくって、記憶をなくしたアメリア様はもとの人格が消えてしまうのでしょうっ!?そうしたら、みんなのことを忘れてしま……」
「それ、ほんとうかい?お嬢ちゃん?」
エリカが必死に話していると、上から女の声が聞こえ、2人は上を見上げる。
帆を支えるマストと交叉した丸太ヤードにポニーテールをした女が立っていた。
「やぁ久しぶり、ナイル。まだ、この世界にいたんだね」
女は軽い笑みを見せ、2人を見下ろしていた。
突然現れた女に驚き、ナイルは目を見開いていた。
「…………テウタ」
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