No.56 ゾフィーじゃなかったんです
「お前何言ってんだ」
本当に意味が分からん。
うちは真顔のカンデラを見つめる。
「それっ!?」
「俺とあんたはどうでもいい争いから離れて2人でひっそり逃げようって言ったんだよ」
カンデラはぶっきらぼうにそう言うと、またうちに背を向ける。
ますます意味が分からん。
「お前と?なんで、お前なんかと……」
「あんた、バリア主魔法だろ。
部屋にはカチャカチャと道具が当たる音が響いていた。
何か準備しているカンデラの声は徐々に弱っていく。
「いい顔して、俺に近寄って。家族はいいように利用して。正直、しんどい。けれど、逃げる訳にはいかなかった。でも、あんたと再会してそうもいかなくなった」
「ん?前に会ったことあったか?」
「……あんたは覚えていないだろうね」
「はぁ……?」
何かしら準備をしていたカンデラはアメリアの方に近づき、手に持っていた赤い紙と紫の石をアメリアの太ももの上に置いた。
赤い紙には黒い線で魔法陣らしいものが書いてあった。
これ……。
古代魔法について書かれた本にあったような。
本は青い紙だったのだけれど。
赤い紙……??
カンデラは赤い紙の上に乗った手のひらサイズの紫の石に触れ、目を閉じる。
「あんたはきっと研究好きだから……」
「んっ?なんでお前知ってんだよっ?」
「見ていた」
「はぁ?」
「あんたの研究室の窓から。まぁ、研究室持ってる時点で好きなんだろうなと思ったが」
へっ?
研究室の窓っ?!
ゾフィーに見られていたと思っていた視線はカンデラからのものだったのかっ!?
なぜっ!?
「……こんな話はどうでもよくって。あんたは研究好きでもあるから後々戦争に巻き込まれる」
「はぁっ!?意味が分からんっ!?そんなわけなかろうっ!?」
「そうなんだよ。だから、あんたの記憶を消す。そして、俺とあんたは平和な街で暮らす」
はぁっ!?なんで、お前がうちの人生を勝手にっ!?てか、うちの記憶を消すっ!?
はぁっ!?
そんなの聞いてねぇぞっ!?
おい、公式っ!!
こんなキャラも、
こんなルートも、
聞いてねぇぞっ!?
「おまっ!!っつ!!!!!」
アメリアが反論しようとしたとき、アメジストのような石がキラキラと輝き始めた。
いてっ!!
なんじゃあっ!?
頭に酢酸をかけられたような痛みがっ!?
ん?表現がいまいち分かんない?
えーと、じわじわ来る痛みだ。
じゃなくてっ!!
なんで、こんなのんきに痛みについて言ってんだっ!?
痛みで思わず目を閉じたアメリアは片目を開き、目の前で膝をついているカンデラを見る。
カンデラも必死そうで汗が頬を伝っていた。
数秒後、紫の石が輝いてたものが打って変わってアメリアの周辺に闇のようなものが広がっていた。
これはっ!?
まさかっ!?
本でしか読んだことがないが、紅の魔女が作った禁忌魔法っ!?
「あ、おい、ふざけ……っつ!!!!」
アメリアは津波のようにやってくる痛みに耐えられず、目を思いっきりつぶった。
そして、痛みは何度も押し寄せ、アメリアの意識は遠のいていく。
傍から見るとアメリアは開いているが目に輝きはなく、遠くの方を見つめているようだった。
え。
うち、これで終わり?
せっかく、魔法がある世界に来たのに?
遠のく意識の中アメリアがそう考えていると、カンデラの声が聞こえた。
「バーイ、アメリア・C・トッカータ」
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