No.55 この世界からさようなら
「王子さん、大丈夫かい?顔色悪いけど……」
テウタはフレイに近づき、様子を
究極に嫌な予感がしたフレイは無理をしたような笑顔を見せる。
「うん……。それよりも1回、船の中を敵がいないか確認してきてくれる……??巨大なオーラを感じたんだ。もし、敵が潜んでいればアメリアを助けに行く前に僕たちがやられるかもしれない」
「えっ!!この船に敵がっ!?」
「もしかするとだから……。まぁ、一応確認してきてくれる?」
「あ、はい……。了解す」
フレイの予測が当たっていれば今後自分たちがピンチになることは間違いないと思ったテウタは舵取り以外の部下たちに指示を出し、船の中全てを敵らしき者はいないか確認させた。
フレイが魔王城の方を眺めていると、自身も確認していたテウタがやってきた。
「王子さん、船の中は誰もいなかった。事細かく探したんだけどね」
「……そうかい。やっぱりあの大きな魔力の正体は僕の勘違いだったかもね」
「私としてもそれがいいです。今、ここで魔王がくるのはしんどいですし」
「そうだね。よし、じゃあアメリアを助けに行くんだけど……、クリスタ!」
椅子に座っていたフレイは前の机に置いてあるパソコンに話しかける。
『はーい。場所ですね……。あー、魔王城付近にやはりいますよ。そこを通ってあのセクエンツィア国に行くかもしれないですね……』
「急がないとな……」
「あ」
「どうした?テウタ?」
フレイがそう声をかけると、テウタは魔王城がある方ではなく、
トッカータ王国海領沖を指さしていた。
「あの船だ」
「えっ、船?何もないけど……」
何度見ても暗闇しかなく、船の明かりはなかった。
「いや、あそこにいる。アイツら器用に魔道具使ってるわ。おい、お前ら旋回してくれっ!!急げっ!!」
テウタの指示により、船はすぐさま旋回し、見えない船に向かって進み始めた。
驚いていたフレイは真剣な表情のテウタの横顔を見る。
彼女は一体……。
そして、なぜ船はトッカータ王国向きへ?
★★★★★★★★★★
「なぁ……」
「うるさい。静かにしてくれる?」
首と表情筋以外動かせなかったアメリアはシアン髪の少年にある部屋に運ばれ、椅子に座っていた。
結構、豪勢な椅子だが……。
アメリアの手、腰、足にはロープで椅子にがっちり固定されていた。
もともと動けないから意味ないんだが……。
「おい、少年」
アメリアは唯一この部屋にある棚をいじっていた少年に話しかけた。
「カンデラ」
「あ?」
「俺の名前だ。てか、少年とか……。俺はガキじゃないぞ」
「どー見てもガキだろ。それで、カンデラ今から何するんだ?うちらを攫ったということは何かしら目的があるはずだろ」
確か、ナイルルートのバットエンドエリカは奴隷にされるか死ぬか、トゥルーエンドは2人だけで他国へ逃げて暮らすんじゃなかったけ?
よく考えりゃあ、その時、アメリア令嬢さんは海の上にはいなかったはずだよな?
そして
この状況はどうなってるんだ?
「目的……。ああ、あるよ」
「なんだよ」
アメリアに背を向けていたカンデラはくるりとこちらを向いた。
「俺ら一緒にこの世界から消えるのさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます