No.54 え、乗ってないすよ

「君さ、状況分かってる?」





アメリアは彼の目を見つめていた。





「ああ、分かってるよ。さ、どこでもいいから廊下以外のとこ連れてけ」


「分かってないじゃん」





と言いつつ、少年はアメリアをまた横抱きにし、歩き出す。





「なぁ、どこ行くんだよ。てか、エリカは?」


「他の部屋。アイツは知らん」


「エリカには何もするなよ。何かするんだったらうちにしろ」





少年はアメリアの言葉を無視して歩き続けた。





★★★★★★★★★★





「あ、王子さんだ」


「久しぶりだね」


「どうも。えーと、単刀直入に言いますが、なぜここに?」





フレイはトッカータ王国王女専属海賊騎士テウタの船に移っていた。

数十分前、双眼鏡を手に取り、オーラを感じる方を見ると、立っている彼女が見えた。

フレイ自身、ヒラリー姉にテウタが先に向かっていることは知っていたので、情報共有のためテウタの船に近づいた。





「アメリアのことだよ、ヒラリー姉から教えてもらってね」


「あ、それで。今、アメリアが乗っているであろう船が向かっている方向を予測してむかっているんですけど……」


「それなら僕の友人が正確な場所を教えてくれていたんだけど、場所が魔王城周辺なんだよね」


「魔王城すか……まぁ、そんなに時間はかからないすね」


「え?」





僕はテウタの意外な反応に目を丸くしていた。


最近海でも大陸でも魔物の出現がなぜか増えている。

それによって、テウタの所は少し被害を受けており、困っているがどうしようもできないという話を僕は聞いていた。


でも、そんな彼女はなんとも思わないなんて……。





「ん?どうしたんすか?王子さん」


「えーと、テウタさんは魔物とか恐れないの?」





僕は恐る恐る聞いてみる。

すると、テウタは悪い笑みを浮かべた。





「これ絶好のチャンスじゃないすか。アメリアを助けて、魔王を潰し、私のところの損害を抑えることができるんすよ。逃すことはできません」


「ああ……そう。じゃあ、ルースたちと連絡を……」


「ルースすか、さすがですね」




あまり良い子には見せたくない笑みをしていたテウタは普段の笑みをしていた。





「あ、場所を特定してもらってるのはクリスタだよ」


「あー、アイツ相変わらずすね。ヲタ……」


『テウタ様、聞こえておりますのよ』


「げっ……」





とテウタがクリスタから場所について教えてもらっていると、フレイは月が映る海を眺める。

フレイは魔王城があるであろう方向に目を向ける。


若干だが、魔力を感じる。

……。

復活することはないと思いたいんだが……。



心配になったフレイは首を横に振る。



いや、大丈夫だ。

怪物のようなアメリアも、

その怪物に劣らない国の騎士も、

光魔法のナイルファンエリカも、

頼もしい海賊テウタや頭の回転の速いルースとクリスタ、

開発品をバンバンだすハオランをいるんだ。

復活して膨大な魔力を持った魔王が現れたとしても大丈夫だ。

うん。



フレイはそんなことを考えているとあることに気づいた。



さっきテウタを発見したときのオーラはなんだったんだ?

確かにあれは魔法のオーラだった。

しかも、巨大なもので、

精霊ものじゃない。

でも、テウタは主魔法持ちではないし、ましてや魔法は使えない。



フレイはすぐさまテウタの方に体を向ける。



「テウタさん、この船に魔法を使える人って乗っているの?」





フレイが声をかけると、スカイぺでビデオ通話していたテウタが顔をフレイに向けた。


































「え、乗ってないすよ」


「え」





まさか、敵が……。



嫌な予感がしたフレイは顔を青くしていた。

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