ギルド【暁の猫】篇
第4話 仲間というもの
020 仲間というもの Ⅰ
決戦の日、祐斗、大河、そして、瑞希は八雲の家を出発し、イスミシティに入った。東区はいつも通り、平和で穏やかな日常を送っていた。
三人は東区から中央区を通り、西区へと潜入する予定だ。
「なぁ、一つ質問をしてもいいか?」
祐斗がようやく口を開いた。
「なんだ?」
と、左隣で歩く大河が、返事を返す。
「なんで、瑞希さんが俺達と一緒にいるんだ? お前の目的は俺と似ているが……」
「何を言う。彼女は俺達が心配で一緒について来てくれたんだぞ。あの凛々しい姉さんを俺が守る。まさにかっこいいじゃないか! ああ、守りたいあの美貌‼」
と、聞く相手を間違えたと思った祐斗は、溜息を漏らす。
この男は、美しい女性だったら敵であっても戦えそうにない。むしろやられるのではないかと、祐斗は心の奥底で思った。
「それで瑞希さん。どうやって西区に入るつもりなんだ? 警備とか厳しいんだろ?」
祐斗は目の前を歩く瑞希に訊く。
「ああ? そりゃあ、最初に一緒に入るがその後はバラバラになるが、潜入の方は任せろ。私にとっておきがあるからな。本当は正面から堂々とぶっ壊してやりたいところだが、今回はやめておいてやるさ」
と、瑞希はそんな事を言うが本当にやりそうで怖い。
(絶対、ギルドの半壊が想像できるな……)
祐斗は、この一週間で瑞希の恐ろしさを嫌というほど思い知った。
初日は、あの馬鹿強い力。それから一週間、何度も彼女に挑むが未だに一度も買った記憶が無い。
祐斗の体には、無数の切り傷や擦り傷が残っている。
その傷を見るたびに修行でさんざん言われ、やったことを思い出す。
× × ×
三日前————
「壱の型、『黒炎』‼」
祐斗は、木刀で瑞希に斬りかかった。
「壱の型、『炎鉄』‼」
瑞希もまた、同じ壱の型で祐斗に対抗する。
剣と剣が交差し、一ミリも油断できない。
「瑞希さん、なんであんたはこんな所にいるんだ?」
「なんだ? 戦い中に話をするのか? 舌を噛むぞ!」
瑞希は、にやけながらここ数日間で強くなった祐斗を見る。
「あんたは強いのになんでこの世界から抜け出そうとギルドに入らないんだ? 八雲さんだってそうだ。俺よりも数倍強いのにこんな所で医者をし、普通に暮らしているんだ⁉ 俺は元の世界に帰りたい‼ そして、奴が何のためにこの電脳世界を作ったのか真実が知りたい‼」
祐斗は、話しながら剣のスピードを上げていく。
「そうか! 私には分からないな? 私はむしろこっちの世界が気楽で楽だけどな‼ 日本は狭くて、今の生活なんてとてもできない世界だ。朝から晩まで働き、そして、家路につくと飯も食わずにそのまま睡魔に襲われ眠ってしまう。自分を鍛え上げたいのに鍛え上げられない。今の力を手に入れたのは、私が私でいるためだ‼」
瑞希は、祐斗の剣のスピードにしっかりと受け止める。
「俺は元の世界には戻りたいが、この世界だっていいと思っている。どちらの世界にいる自分も自分だ。自分の弱さを思い知らされるほど、現実を知ってしまう。それでも俺は……」
と、続きを言おうとすると、
「話しているせいで、わきが甘くなっている‼」
瑞希は、祐斗の一瞬の隙を見逃さず、反撃した。
「ぐはっ‼」
木刀が溝に当たり、一瞬呼吸がしづらくなる。
「がはっ! んっ、んっ、ぜっ、ぜっ……」
祐斗は蹲って、溝の方をおさえ、思いっきり咳をする。
「溝内は、相手の呼吸を狂わせることができる。これは誰にでもできる。気が緩むと私は容赦なく斬るからな。これはまだほんの挨拶代わり。さっさと起きろ、続きをやるぞ‼」
瑞希は容赦なく祐斗に厳しくする。
祐斗は、すぐに起き上がって瑞希と剣を交える。
初日よりかは、祐斗の腕は上達している。
剣の動きや体の無駄な動作が無くなっている。魔法も今までより威力も上がり、応用できるようになった。
「そう言えば、この修業が終わったらお前の新たな剣を作る予定だ。その時、お前にも手伝ってもらうぞ‼」
瑞希が言った。
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