24.昔の記憶


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小さい頃は仲が良かったと思う。

仲が良かったわけではないのか?でも、少なくとも弟は俺にべったりだった。そして彼は何かに怯えるように、不安な顔をいつもしていた。


「ねぇ、もし、僕がお兄ちゃんの弟じゃなかったらどうする?」


繰り返し、同じ質問をされた。

縋るように俺を掴む指先は、微かに震えていて。心の底から怯えてるんだって見てすぐわかった。



「そんなわけないだろ。だって、俺はお前のことこんなに大好きなのに」



当たり前のことを、俺も繰り返し答えた。弟はきっといつもその言葉を待っていたのだと思っていた。同じ質問に、同じ返答。儀式のように繰り返される行為は、俺にとっては正直当たり前のことすぎてなんとも感じずにやっていた。だけど、弟にとってはちがったのかもしれない。


この会話が彼にとってひどく大事ものだったのかも。


大好きなんて言葉は兄弟であることの証明になんてなっていない。それどころかそんな感情は不確かなものでしかなくて、不確かなものしか提示されないことが、さらに彼の中の不安を増していたのかもしれない。



今更、そう思う。



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