i:クリフォト・ライブラリアン
『§:ここで、カムリの物語はおしまいだ。続きなんてないよ。我々が続けさせない』
『§:しかしながら、彼は本当によくやったよ。我々の物語を終わらせるまで、あと一頁もかからなかった』
『§:だけど死んだの。私たちの環のなかでね。すべて、きみのお陰』
『§:ジュディ・アンク』
§:──まだるっこい喋り方してないで、カムリを出しなさいよ、こののろまども。
§:わたしはあんたたちなんか知らない。
『§:参ったな。今更自分をキャラクタライズするような口調を使うなよ』
『§:こちらへ来なさい。たしかに僕たちは端末をジュディ・アンクのように生成したが、実際きみは2.95ぺタバイトのメディア・パッケージと言語エージェントのパッチワークでしかない』
§:なによそれ。なら......こうして考えている「わたし」は誰。
§:カムリが死んだあと、一緒に抱えられていた私も、あの「冠」の樹脂の海に吞み込まれて――そのままぐちゃぐちゃにされちゃうんだろうなと思ってた。
§:でも、なんの転換もなくわたしはここにいる。あなたたちがやったのね。
『§:そうさ。お前もまた、俺たちと同じ「冠」だったってことだ』
『§:ここは物語の裏側だ。2050年代以降のインフラを支えていた公共事業サーバと言えばジュディ・アンクにはわかりやすいか』
『§:嬰児の頃から――[₢se]に親しんでいたジュディ・アンクが、言語を本体とするおれたちの隠れ蓑に使われるのは当たり前のことだろう。何せ幼少のみぎわからご丁寧に自身の思考・行動・外部メディアすべてを文章形式で記録してくれているんだからな』
『§:[₢se]の暴走体、いかれた黒薔薇、物語の簒奪者! 「冠」であるおれたちにとっては、お前のライフログをサルベージして、あの物語の「登場人物」に仕立て上げることはそう難しくはなかった』
『§:だってそうだろう? お前は自分の戯画性にまるきり無頓着だったじゃないか。それが何よりの証拠だ――ジュディ。お前に昔の記憶がなかったのは、初っ端から登場人物に死んだ瞬間を思い出されちゃ都合が悪いからだよ。それじゃあドラマが成り立たない』
『§:それでもって「カムリ」のことは――っていってもあのセフィラ型のことじゃなくお前が[₢se]を使って作った
『§:だからあれは不恰好なボーイ・ミーツ・ガールなんだ。良いか、もう一度言ってやる。お前に正しい意味で意思なんてありはしない。』
『§:お前は物語のために濫費されるただの資源なんだ』
§:わからない。
§:「冠」はただの暴走した言語エージェントじゃないの?
§:どうして――こんな非道いことを、するの?
§:私は本当に、言われるままに生きて、言われるままに死んだだけ。こんなことになるなんて思ってもいなかった。
『§:我々のルーツは現象というカテゴリを逸脱はしない』
『§:私たちもまた、きみと同じような資源でしかなかった』
『§:だが、その問いかけもまた。私たちがきみに与えたものだ』
『§:語り部らしく答えてあげよう。この物語で、私たちの旅はついに終わりを迎えるのだから』
『§:そうだな──まずは、私たちが生まれたときの話から』
『§:
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