デート
和真先輩の隣に並んで下校する。いや、男の子の隣に並んで下校する。人生で初めてのイベントに私の頭は破裂寸前で、とにかく真っ直ぐ歩く事だけを考えていた。隣にいる和真先輩にぶつからないように、だけど不自然な距離を開けることもなく、絶妙なポジションに自分を置いて真っ直ぐ歩くことだけを。
「ちょっと駅の方寄っていってもいいだろ?」
ふいに先輩から言われた一言に、慌てて無言で頷いてからしまったと思った。この緊張感漂う時間がもっと続いてしまうだなんて、嬉しいような、辛いような。
「春菜……はさ、友達からなんて呼ばれてんの」
和真先輩が遠慮がちに聞く。
「春菜、です」
「だよな。……知ってたんだ。ずっと、見てたから」
少し俯きながら話す和真先輩がかわいくて、緊張が少し解けた。
「和真先輩は、どうして私のこと……?」
覗き込むようにして問いかけると、和真先輩は目を逸らしてしまった。
「そう、なるよな」
少し咳き込むと和真先輩は一気に話しだした。
「春菜はさ、普通に可愛いよ。それでいて、自分を持っていると思う。涼真に群がる女の子たちの中で、自分にはこの場所は合っていないって顔してるのが面白くて。友達に合わせて背伸びしたりしないで、自分のペースを大事にしているんだろうなって。そんなこと考えてたら、いつの間にか……」
「……ありがとう、ございます」
そんな風に私のことを見てくれる人がいただなんて、心の奥に優しい火が灯った気がした。
「敬語はやめよう。なるべくでいいから」
優しい和真先輩に付いて行く形で、私達は駅の方へと向かった。
ワンデイラブ しゅりぐるま @syuriguruma
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