待ち合わせ
蛇口から水が垂れるのをじっと見つめていた。一粒垂れる度に、時間が経っているのが分かる。どんな顔をして和真先輩に会いに行けばよいのだろう。鈍感な私がはっきりと気がつくくらいの、王道の告白をしてくれた先輩。……罰ゲーム、なんかじゃないよね?
先輩からの呼び出しから戻り事の顛末を告げた時、友達はみんな「やったね!」と言ってくれた。サッカー部ナンバーツーからの突然の告白を疑う者は、私以外に誰もいなかった。
「春菜もちろん行くんでしょ?」
「図書室で待ってるなんて意外だね」
「校門だと目立つから、春菜に気を使ってくれたのかもね」
友達からの指摘に初めて先輩の優しさに気がつく。自然と頬が赤くなるのを感じた。
友達みんなからの全肯定を受け、たくさんの暖かい視線に後押しされたというのに、私はさっきからずっと蛇口を見つめていた。図書室へ行くための渡り廊下の手前で狙ったかのようにぴちょんぴちょんと音をたてて垂れる水は、私の勢いを止めてしまった。このまま帰ったら、どうなるだろう?
廊下の壁に背中を押し付けて、水が垂れるのを待っていると、いつの間にか隣に人が立っていた。
「よお」
和真先輩だった。
「いてくれてよかった」
約束の図書室にはたどり着いていないのに、和真先輩はそんなことは一言も言わなかった。
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