第10話おおきな木の上のちいさなこびと町

みんな知ってる?


何百年も生きているおおきな木の上には、ちいさなちいさなこびとたちが住んでいるんだよ。


でもね・・・


まだ、みんな見た事がないんだって。

えっ?それならどうしてこびとの町があるって知っているのかって?


それはね・・・


僕はそのこびとの町に行ったんだもん♪

嘘じゃないよ!ホントだよ!


その証拠に、ほらっ!

こんなに素敵なプレゼントをもらったんだよ。


今日は僕がこびと町のことをみんなに教えてあげる。


僕がこびと町に行ったのは、まだ3歳の時。

僕の住んでいる町にはおおきな木がひとつ立っているんだ。

丘の上にあるそのおおきな木は、いつでも僕たちを守ってくれているんだって。



僕は3歳の時、まだその木がとっても怖かったんだ。

だって、とっても大きいし、そばに行くと食べられちゃいそうだったんだもん。


でもね・・・


僕のお姉ちゃんが悲しくなるとそのおおきな木の下で泣くんだ。

そうすると木が悲しいこととか、嫌だなぁって思ったこととかを全部食べてくれて、元気にしてくれるんだってって教えてくれた。

おおきな木は僕を食べるんじゃなくて、みんなの淋しい気持ちや悲しい気持ちを食べてくれるんだって知って、僕、怖くなくなったんだよ♪


あ、でも一人ではおおきな木のそばには行けなかったけどね・・・


その日は、いつもの様にお姉ちゃんが学校で嫌なことがあったって言って木のそばまで行ったんだ。僕もついて行ったんだよ。木の近くまで行ったらお姉ちゃんが急に、

「おかし、忘れちゃった!取って来る!」

って言ってお家まで帰っちゃったの。

「僕も一緒に帰る!」

って言ったのに、お姉ちゃんには聞こえなかったみたい。

一人になっちゃった僕は淋しくて、怖くて、動けなくなっちゃったんだ。


そしたらね・・・


「きみ、名前なんて言うの?」

って誰かが聞いて来たんだ。僕は誰かがいるって思ったから頑張って涙を止めたんだよ。

だって、男の子なのに泣いてるとかっこう悪いからね。

「どこにいるの?だぁれ?」

僕はキョロキョロ探したんだけど、誰も見つけられなかったんだ。


そしたらね・・・


「僕はココだよ♪」

ってまた聞こえたの。そして声がするのが上の方だって気がついたんだ。

そっと上を向くと・・・


「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


そこにはたくさんのちいさなちいさな子供たち!


「君たち、どうしてそんなに小さいの?」

って僕が聞いたら、その子たちの一人が、

「僕たち、こびとだもん♪こびとはちいさいって決まってるんだよ♪」

って答えて来た。


こ・び・と・?


僕はこびとって言うのが分からなかったんだけど、不思議と怖くなかったんだ。


「君、いつもココにお姉ちゃんと来てるよね。僕たち、いつも君を見てたんだよ。お姉ちゃんは大きいから僕たちを見つけられないんだけど、君ならきっと見つけてくれるって思ってたんだ。」

こびとの一人が言った。


大きいと見つけられないの?僕は小さいの?!


僕はいつも一生懸命牛乳を飲んでるのに、「小さい」って言われて、嫌な感じになった。パパみたいに大きくなりたくて一生懸命ご飯も残さないで食べてるのに「小さい」なんてひどいよ。

それに、この子たちは僕よりもずっとずっと小さいのにさっ!


「僕、小さくないもん!君たちより大きいもん!」

僕が言うと、急にこびとたちは大笑いした。

僕はさっきよりもっともっと怒っちゃった!


「僕、帰るっ!」


僕は気に背中を向けた。

でも・・・

「帰る道・・・分かんない・・・」


そんな僕を見てこびとたちは、

「僕たちの町においでよ。楽しいよ♪」

って誘ってくれた。

「僕たちの町?」

僕が聞くと、

「うんっ!こびと町!この木の上にあるんだよ。」

って教えてくれた。僕は行ってみたくなったんだ♪


でも・・・


「僕・・・こんな高い木、登れないよ。」


そんな僕にこびとの一人が魔法をかけたんだ。


そしたら・・・


なんと僕の背中に羽が生えたんだよ。

あと、僕の身体がこびとたちと同じくらい小さくなっちゃったんだよ!

僕はドキドキした。でもワクワクした。

そして、僕はこびとたちと一緒にこびと町に行ったんだよ。


そこには、僕の町と変わらない町があったんだ。

ひとつだけ違うのは、みんなが楽しそうだって事。


僕のお姉ちゃんはよく泣く。

でもここのこびとたちは誰も泣いてないんだ。みんなが楽しそうで、みんなが仲良し♪僕も楽しくなってずっと遊んでいたんだよ。


「ここは、ずっと君を待っていたんだよ。」

こびとの一人が言った。

「どうして?」

僕が聞くと、

「君はいつもお姉ちゃんの悲しい顔を見てるのがかわいそうだって思ってたでしょ?僕たちは気味のそんな顔を見るのが辛かったんだ。僕たちが君を元気にしてあげるには僕たちの町に招待しなくちゃ!って思ってたんだよ。ここは悲しい顔をしたお姉ちゃんもいないから、きっと君も楽しくなるって!笑ってくれるって思ったの。」

って言った。


僕は、お姉ちゃんを見ていつも悲しい顔をしていたなんて気付かなかったんだ。こびとに言われて初めて気が付いたんだ。


それからしばらくこびと町で楽しく遊んでいると、遠くからお姉ちゃんの声が聞こえたんだ。

「あっ!お姉ちゃんだ!僕、行かなくちゃ!」

僕が言うと、こびとたちは

「うん・・・淋しいけどしょうがないね。僕たちね、君が悲しくなったらいつでも逢いに来るからね。でも君が誰かに僕たちの事を話しちゃったら、もう逢えなくなっちゃうからね。」

って言った。


「えっ?君たちのこと、お姉ちゃんに言っちゃダメなの?」

僕が聞くと、

「うん・・・僕たちは、君にしか逢いに来られないんだよ。君しかこびと町に招待できないんだ。約束だよ・・・誰にも言わないでね・・・言ったら逢えなくなっちゃうからね・・・」

こびとの声が小さく聞こえた頃、僕は元の大きさに戻っていて、木の下で横になってたんだ。

お姉ちゃんが心配そうに僕を起こしてた。


「大丈夫?置いて行っちゃってごめんね。今日はなんだか泣かなくても元気になっちゃった。だから、迎えに来たの。お家に帰ろう♪」


お姉ちゃんはとっても元気になってた。

僕も嬉しくなってニコニコしたよ。


その夜、どうしてもお姉ちゃんにだけは言いたくて、こびとたちとの約束を破っちゃったんだ。小さな声で話せばこびとたちには聞こえないって思ったんだ。

でもお姉ちゃんは信じてくれなかった。夢見てたんだって言ってた。

「それなら明日、一緒に行ってみようよ!逢わせてあげるよ!」

僕はどうしてもお姉ちゃんをこびとたちに逢わせたかったんだ。こびとたちもきっと僕の気持ちを分かってくれるって思ってた。


でも・・・


やっぱりこびとたちは出てきてくれなかったんだ。

約束を破った僕を怒ってるのかもしれない。ごめんなさい・・・


あの日から毎日、毎日、あのおおきな木の下に行ったけど、こびとたちとは逢えなかったんだ。

そんなある日、ポストの中に手紙が入ってたんだよ。僕の名前が書いてあった。そして、可愛い絵が描いてあった。その絵は小さい僕が持ってる手紙にはばってんが描いてあって、大きくなった僕が持ってる手紙にはまるが描いてあった。僕はまだ字が読めないから、きっと字が読めるようになったら開けてもいいよってことなんだろうなぁって思った。


そして、それがこびとたちからだってすぐに分かったんだ♪


それからずっと手紙を大切にしまっておいたんだ。そして、字が読めるようになった日。僕はその手紙を開けたんだ。


「ぼくたちのともだちへ

あのひ やくそくをまもってくれなかったのは さみしかったけど みんなはきみがさみしいかおをしていたので でていこうかといっていました。 でもがまんしました。ぼくたちのまちのきまりなんです。

ぼくたちは いまでも きみをみまもっています。

つらくなったら あのおおきなきのしたに きてください。ぼくたちが きみに げんきをあげます。

どうしても つらくなったときに いちどだけ こびとまちにこれる しょうたいじょうを いれておきます。

でもそれをつかったら にどと あえなくなります。

ほんとうに つらくなったときに つかってください。

それまで たいせつに もっていてください。  こびとまちのこびとたちより」


手紙にはこう書かれていたんだ。

僕は嬉しくなった。だって、夢じゃなかったんだもん♪

それだけで嬉しくて、お姉ちゃんが信じてくれなかったあの頃のことはもう吹っ飛んじゃった!


僕はそれから辛いことは何度もあったけど、あのおおきな木の下に行って目を閉じるだけ。

招待状はまだ使ってないんだ。

多分、ずっと使わないで持ってると思う。


だって、僕がこびと町に行けたのは夢じゃないっていう証拠だもん♪僕が大きくなってもずっと持ってるんだ。


僕の大切な宝物としてね・・・♪


あ、もしかしたら君の町にもおおきな木、ない?

その上にはこびとたちが町を作っているかもしれないよ。

君も僕と同じようにこびと町に行けるといいね。

行ったら、僕にも教えてね♪

一緒にこびと町のこと、お話しようよ。

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あかり紀子の童話集 あかり紀子 @akari_kiko

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