第9話夏休みの冒険

ゆうちゃんは今日から夏休みです。


お引っ越しをして初めての夏休み。

幼稚園でもたくさんのお友達が出来たゆうちゃん。

しばらくは幼稚園もお休みです。


「またねぇ~♪」


今日はお友達とたくさんこの言葉を言いました。

「ねぇ、ママ。『またねぇ~』ってどれくらい?」

ゆうちゃんは「またねぇ~」と言う期間があると思っているようです。


ゆうちゃんのママは、

「いちにちかもしれないし、もっとたくさんかもしれないよ。『またねぇ~』は、また逢うための おまじないだからね♪」

と教えてくれました。

「おまじないかぁ~♪」

ゆうちゃんは何となく楽しくなりました。


家に帰ると一通のハガキが届いていました。

おくりぬしは・・・

大好きなひろくんです!


「ゆうちゃん♪

もうすぐなつやすみだね。ひろくんのいえに あそびにきませんか?たのしみに まっています。  ひろし」


ハガキにはそう書いてありました。

でもゆうちゃんはまだ5歳。ひろくんの家に一人で行くなんて出来ません。


ゆうちゃんがハガキを握りしめて黙っていたので、ママは

「ひろくん、なんだって?」

と聞いてくれました。

「ゆうちゃんに 遊びにおいでって。」

ゆうちゃんが答えると、

「そう♪行く?」

ママが尋ねました。

「行きたいけど・・・ママ、連れてってくれる?」

ゆうちゃんが聞いてきました。

「もっちろんっ♪」

ママはニッコリ笑って答えてくれました。


ゆうちゃんは急に嬉しくなりました。

大好きなひろくんに逢えるのです。

早速電話をすると、ひろくんが出ました。

しばらくゆうちゃんとひろくんは話をして、二人ともママに代わりました。


ママたちは何やら相談をしている様子でした。


そして、電話を切ると・・・

「ゆうちゃん!明日行くよっ!」

ママが言いました。

「やったぁーーーーーーーー!」

ゆうちゃんは大喜びです。

「お泊りしてもいいんだって♪」

ママが続けました。

「お泊り?」

ゆうちゃんはママに尋ねました。そして、

「おとまりって・・・ママも?」

と続けました。

「どっちがいい?ゆうちゃんが一人で挑戦してみるって言うならママは送って行くだけで帰って来るし、一人じゃ怖いって言うなら一緒にお泊りするけど。」


ママに言われてゆうちゃんは少し考えました。

実はゆうちゃん、今年は夏休みの前に幼稚園でお泊り会があったのです。無事に終えたお泊り会のおかげで一人でも泊まれる気がしていたのです。

そして・・・


「ゆうちゃん、一人でお泊りするっ!」


ゆうちゃんの出した答えはこうでした。

ママも賛成してくれました。


次の日。


約束通りひろくんの家に遊びに行ったゆうちゃん。

久しぶりに逢ったひろくんは、なんだかとってもお兄さんに見えました。

ゆうちゃんは最初、チョット恥ずかしそうでしたが、ひろくんが、

「ゆうちゃん!早く早くっ!あっちで遊ぼうっ!」

と声を掛けてくれたので、恥ずかしさがどこかに飛んで行ってしまったみたいです。


2人はひろくんの部屋で楽しそうに遊び始めました。


 夕方になる少し前。

「ママ、そろそろ帰るわね。」

ゆうちゃんのママがそう言うと、

「もう帰っちゃうの?もう少し遊びたいぃ~!」

ゆうちゃんが言いました。

「遊んでていいよ。ゆうちゃんは今日お泊りでしょ?」

ママがニコニコして言いました。

「あっ!そっか!ゆうちゃん、帰らないんだった♪」

お泊りすることをすっかり忘れていたのでしょうか?ゆうちゃんは、まだ帰りたくないと駄々をこねる所でした。


「本当に一人でお泊り出来る?」

ママが最後にもう一度聞きました。ゆうちゃんは、

「大丈夫!ママ、バイバイ♪」

と元気に答えました。


ママはゆうちゃんが大丈夫なうちにひろくんの家を出る事にしました。


ママが帰った後、しばらくはひろくんと楽しく遊んでいたせいか、何事もありませんでした。

ところが、夕飯が済み、お風呂に入り、さぁ!寝ましょう♪と言う時、ゆうちゃんは急に淋しくなってしまいました。


「・・・ゆうちゃん、お家に帰る・・・」


小さな小さな声でゆうちゃんは言いました。

「ゆうちゃん!大丈夫だよ!ひろくんと一緒に寝よう♪」

ひろくんがそう言っても、

「・・・・・」

ゆうちゃんは淋しくて声になりませんでした。


そんなゆうちゃんを見て、ひろくんのママが言いました。

「ゆうちゃん♪せっかく夏休みなんだもん。冒険しない?」

「冒険?」

「そうっ!冒険!夏休みじゃないと出来ない事ってたくさんあると思うんだ。でもその全部が出来るわけじゃないでしょ?まずはひとつ!ひろくんちでお泊りできたら、ゆうちゃんはひとつお姉さんになれると思うんだけどなぁ~♪」

「お姉さんかぁ~♪」


ひろくんのママの言葉にゆうちゃんは考えました。

冒険してお姉さんになったら、夏休みが終わった時にお友達にたくさん楽しかった事を話せるけど、お泊りが出来なくてお姉さんになれなかったら、きっとお友達にも話せなくなる・・・


楽しかった!ってお話したい!


ゆうちゃんは冒険をする事に決めました。

そして、ひろくんと同じ布団で2人は手をつないで眠りました。


その夜、ゆうちゃんは夢を見ました。

それはひろくんと2人で大きな怪獣とたたかう夢でした。

ひろくんがやられそうになるとゆうちゃんが、ゆうちゃんがやられそうになるとひろくんが助けてくれて、無事に怪獣をやっつける事ができたのです。


どうやら夢の中でも大冒険をしたみたいですね。


翌朝、ゆうちゃんはひろくんと一緒に起きました。

「おはようっ!」

元気、元気♪


「ゆうちゃん、よく眠れた?」

ひろくんのママが尋ねました。

「うんっ!ゆうちゃんね、ひろくんと怪獣をやっつけたんだよ!」

ゆうちゃんは昨夜の夢を教えました。すると・・・


「えぇーーーーーーーー!ひろくんもおんなじ夢を見たよぉーーーーーー!」

ひろくんが叫びました。

「えぇーーーーーーーー!」

ゆうちゃんはビックリ!

手をつないで寝たせいなのでしょうか?不思議な事もあるものです。


そしてゆうちゃんは、ママが迎えに来るまでひろくんとのお別れを忘れるかのように夢の続きを楽しみました。


2人が寝た布団の横にはひろくんのお気に入りの正義の味方の人形と悪者の怪獣が置いてありました。


ゆうちゃんが帰る時間になりました。ママが迎えに来たのです。

「またねぇ~♪」

ゆうちゃんはひろくんに何度も何度もそう言いました。


また逢うためのおまじない・・・

今度はいつ、ひろくんに逢えるのかなぁ?


ゆうちゃんの大冒険はコレでおしまい。

今度はどんな冒険をするのかな?


そうだ!今度はあなたの冒険も教えてね♪

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