第8話・始まりの朝ー7
「これって元、
当然のことながら、冬人にはその辺の事情はよく分からなかった。誰から聞いたかよく覚えてないが、かつては「秀才の青木崎と人情の大綱」と言われていたと聞いたことがある。
それが今回の事とどう関係しているのかは、検討も付かなかったが。
「校舎のお掃除でもさせるつもりかしら。だとしたら不公平ね」
冬人は香織の言葉に一瞬そうなのかもと思ってしまったが、すぐに海が否定した。
「あそこは今、フェンスで囲まれてるだろ。って事は、もうじき取り壊すって事じゃないのか」
そう、大綱高等学校は、一月ほど前に、三メートル程の工事用フェンスで取り囲まれてしまっていた。よって、校舎はおろか、校庭でさえも外部からは見えない状態になっている。
余り高い建物の無いこの街では、少なくとも肉眼で中を確認する事は出来ない。
「何を揉めてるんだ」
気が付くと、さっきまで少し遠くを歩いていたかに思えた他の生徒達が、正面玄関の前に集まってきていた。
冬人と美香は、その中でも3-Eに編入された者達に一人一人声を掛けていった。
ほとんどの者が文句を一言二言残していったが、その者達は香織に説得されて、渋々校門の方へ戻っていった。
残り五人となったところで、冬人は香織に問いかけた。
「あの」
「何かしら、穂高君」
「さっき、不公平って言った、あれはどういう・・・」
そう問われると、香織はクラス表の方に改めて目を向けて言った。
「大綱からここに来たのは他のクラスにもいるの。あそこからは五十人程ここに来てるんだけど、もし、元大綱の生徒だけでそこを掃除って事なら、その人達だって招集されないと不公平ねって思っただけよ」
そういう事か、と冬人は納得した。だが、今回の事とは余り関係がないような気がして、それ以上何も言わなかった。
登校時間ギリギリになって、天木修と、その取り巻き、
修は冬人の前に立つと
「どけよ、見えねえだろ」
と言って、目の前の冬人と美香を両手で割って、クラスメート表を覗き込んだ。
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