第9話・始まりの朝ー8
「天木君、私達は前の学校のお掃除よ」
まだ自分の名前を見付けられてない修に向かって、香織は声を掛けた。
「はあ?」
「何言ってんだ、お前」
取り巻き達が香織の方を睨みつけたが、香織は動じない。
「お、お前ら、全員同じクラスだぞ! 見てみ」
香織の声が聞こえてなかったのか、我感ぜずなのか分からないが、修は後ろの三人に声を掛けた。
「マジっすか」
「すげえ偶然っすね」
本気で喜んでいるのかよく分からないが、取り巻きの三人は表面上は喜びの声を上げていた。
「水を差すようだけど」
香織は修達の方に一歩踏み出すと、さらに続けた。
「それが、偶然でもないみたいよ」
「何がだよ」
修は声のトーンを落として、上目遣いに香織を睨んだ。
「良く見てよ。このクラス、全員元大綱なの」
そう言われて、修は改めてクラスメート表を凝視した。
「マジかよ」
総勢二十五名の名前を見て、修は呟いた。
「今更なんだってんだ、おい」
まるで香織が悪いかのように、修は香織に食って掛かった。
「落ちこぼれは要らないってか」
そう言われても、ここに居る誰も、その理由は分からない。
言いながらも修も気付いていた。大綱出身とはいえ、実はその中に成績優秀な者も、運動神経が飛びぬけて良い者も含まれている事を。
「私に聞かないでよ。とにかく校門前に集合だから、そこで理由も分かるんじゃない」
「そこに行けば分かるんだな」
「多分」
そこまで話すと、修は無言で校門の方へ向かった。宗史達も後に続いた。
「後は、
そこまで言うと、香織は鞄からノートを取り出すと、何やら書いてそのページを破ると、3-Eの表に張り付けて踵を返した。
「この二人は来ないと思うけど、一応これで良いんじゃない」
その紙にはこう書かれていた。
『3-Eの皆様へ。本日は教室には行かないで、校門前に集合して下さい』
不登校の
「さ、私達も校門に行きましょ」
冬人と美香と香織、そして何故か校門に向かわずに無言でずっとそこにいた海の四人は、そのまま校門に向かう事にした。
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