第7話・始まりの朝ー6
冬人と美香が正面玄関に着くと、既に何人かは登校してきていた。
その中で、3-Eのクラス表の前に立っている者が二人。
香織は学校に留まらず、市内でも、いや、隣町の者でさえも知らない者はいないと言われている美少女だ。それでいて空手三段の腕を持ち、ピアノコンクールで県内二位の実力も持ち合わせているなど、非の打ちどころがなく、近寄りがたいオーラを発していた。
海は、運動神経こそ全くと言っていい程ないのだが、成績は毎回学年二位の実力を持っていて、その中でも数学だけは毎回一位をキープしていた。華奢で色白な為、良く女と間違われるが、本人は余り気にしていないようだ。
冬人はこの二人が苦手だった。
冬人にとって美人とはただの老け顔でしかなく、数学の得意な者は理屈っぽい奴という印象しかないからだった。
声を掛けようかと冬人が逡巡していると、それまで冬人の陰に隠れていた美香が前に出て二人に声を掛けた。
「日野さん、と三矢君」
その声に香織は反応して美香の方に顔を向けたが、海は聞こえていないのか、クラスメート表の方を凝視したまま微動だにしない。
「何かしら、嶋さん」
そう言って香織は美香の方に向かって一歩踏み出した。その低く、それでいて力強い声に、逆に美香は一歩下がってしまいそうになった。
「あの、E組は教室に行かないで校門で集合、だ、そうです」
「は?」
その言葉に反応したのは海だった。
素早く美香の目の前まで歩み寄ると、問い詰める様に捲し立てた。
「どういう事だ?このメンバーは」
黒縁の眼鏡が美香の鼻に当たりそうなほど近くまで海は詰め寄っていた。
明らかな言いがかりに、冬人が割って入る。
「僕達にも解らないんだよ」
それでも海の興奮は収まらない。
「だっておかしいだろ、このクラス割り」
何かを感じたのは自分だけではなかったか、と冬人は思った。
「ちょっと、落ち着きなさい、三矢さん」
その香織の声は空気を緊張させた。本人にはその気はないようだが。
「でも、確かにこのメンバーは‥‥‥意図的なものを感じるわね」
香織も不穏な空気を感じているようだった。
「あ、そっか」
急に美香が声を上げた。
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