第4話・始まりの朝ー3
一人になった冬人はポケットからスマホを取り出してクラス表を写し、中履きに履き替えると、自分の下駄箱を確認して、外履きをそこに突っ込んだ。
「E組‥‥‥
どこかで聞いたような気がするフレーズを思い浮かべながら、冬人はA棟の四階の北角にある3-Eの教室に向かった。
「ったく、なんで学年が上がる毎に階数が上がるんだ?四階って遠いな」
独り言を呟きながら階段を昇る冬人は、三階を過ぎるともう息が切れていた。
冬人は脚力、腕力共に学年トップではあったが、唯一持久力だけはなかった。そのため体力テストでは最終的に中の上程度に落ち着いていた。
四階の踊り場まで来ると、冬人はまず呼吸を整えた。汗をかいたような気がして、一度おでこを右手の甲で拭う仕草をしながら廊下に出てから、右の隅にある自分の教室の方を見る。
すると、丁度美香が教室から出てきたところだった。しかし、明らかにさっきまでの元気はなく、足取りもはっきりと分かる程に重そうに見えた。
「部室に行ったんじゃなかったのか」
少し大きめの声で冬人が声を掛けると、美香は困惑した表情で顔だけこちらに向けた。冬人を見ているはずなのに、美香のその視界には何も映ってないかのようにも見えた。
「荷物を置きに来たんだけど‥‥‥無いの」
また何か忘れ物でもしたのかと、冬人は呆れながら歩を進めた。そして教室の前まで来て、中に入ろうとする。
その光景に、冬人はその眼を疑った。
頭だけ入った体を起こして、頭上の札を確認する。
『3-E』
ここが自分たちの教室であることは間違いなかった。
教室は空っぽだった。いや、新学期が始まったばかりだからとか、そういう事ではない。そこには机も椅子もなかった。すぐに隣の3-Dの教室を覗くと、そこにはちゃんと机が揃っていた。さらに隣の3-Cも覗いてみたが同様だった。
「
再びそのフレーズが頭をよぎる。いや、しかしあれは映画の中での話だ。現実に起こりうるはずのないフィクション中のフィクション。そう思いながらも冬人の頭の中でそのフレーズがどんどん大きくなっていく。
まるで何かの力で選ばれたかの様なクラスメート達。
非現実的と思いながらも、その為に選ばれたと思えば納得できないでもなかった。
映画の中で、デスゲームに巻き込まれる彼らと同様に、僕たちが選ばれたのだとしたら‥‥‥。
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