第二回
「来週も見に行くのか? ヒーローショー」
「ううん、来週は百瀬さんのトークショーを見に行くから。そっちは絶対外せない」
「ふーん。まっ、楽しんで来いよ」
「うん!」
百瀬さんとは、あたしが一番好きなスーパー戦隊の防衛戦隊シュゴレンジャーのシュゴレッド、
地球防衛軍を題材にしていて、あたしが生まれた頃の作品。兄の為にビデオに撮ってあったらしいんけど、観たらドハマリしていた。シュゴレッドはあたしの初恋で、百瀬さんは今も大好きな俳優さん。
シュゴレンジャーを初めて観たのはあたしが三才の時。あたしが生まれた時に放送されていた作品だから勿論リアルタイムでは観れていないし、ビデオも全部録画してあったわけではないから話が飛んでしっかり楽しめなかった。当時は親にレンタルビデオを頼んだことがあったけど、昔の作品はいずれか再放送するからレンタルするのはもったいないとドケチ発言をされて観れなかった。
小さかったあたしは観れないことが悔しくて泣き喚いたことがあったっけ。母に宥められながら当時放送されていたスーパー戦隊を促されてハマリ、まんまと罠にかかったみたいにシュゴレンジャーのことは忘れていった。
ヒーローはヒーローで俳優は俳優。演じているという概念がまだ無かったあたしに、兄が何気無く発した言葉は、あたしのスーパー戦隊人生への大きなきっかけとなった。
『おい萌。お前の好きなシュゴレッド出てるぞ』
『え! どれ!?』
『この敵の部下』
兄が指したテレビ画面に映る人は百瀬さんだったのかもしれない。けれどあたしは。
『え? シュゴレッドはヒーローだよ。敵じゃないもん』
その後、兄から説明されてもお互い子供で、意地を張って答えが出ないままだった。数ヶ月も経って、何となく観ていたドラマに見たことのある俳優が出ていて、ドラマが芝居であるということを認識した。そこで俳優という職業に興味を持った。
中学に上がってからはケータイでインターネットを開けるようになり、シュゴレンジャーのことが、シュゴレッドのことが、百瀬 白椏さんのことが気になって調べるようになった。
シュゴレッドで主演を務めてからは脇役ばかりだったらしい。百瀬さんが出演しているドラマは動画を探して、インタビュー写真が載った雑誌もチェックして買うようになった。
シュゴレンジャーは動画がアップされておらず、高校生になってからはバイトをして、お金を貯めて、全巻レンタルした。
そして今、高校二年生。バイトを続けてお金を貯めて、土日のバイトが無い日は今期のスーパー戦隊のヒーローショーを見に行ってる。バイトもヒーローショーも無い日は、リリースされてその日に買ったシュゴレンジャーDVDを観て過ごしてる。
でも来週は違う。来週は百瀬さんに会える特別な日。
「生の百瀬さんに会えるの楽しみだな」
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