第54話-「優しく見守っててあげるわよ」②

 ――早朝。まだ篤も起きる前から家の電話が鳴っていた。

 こんな時間に迷惑だなと無視していたが、とうとう痺れを切らした叔父が出たらしく、子機を持って篤の部屋をノックしてきた。


 優月からだと言われて、眠たい頭を起こして受話器を耳にあてる。

 ふいに目に入った携帯電話のLEDはベッド脇で着信ありを表示していた。


「どうしたんだよ。こんな朝早くから……。それに家の電話で……」


 寝ぼけたように問うと受話器の向こうから鼻をすする音と、ひくひくとした嗚咽が聞こえる。篤は異変を察して立ち上がり身構えた。


「おい、何かあったのか?」

『やよ……うっ、弥生ちゃんが……』

「弥生が?」

『弥生ちゃんが……うっ、弥生ちゃんが……』

「だからどうしたんだって?」



『死んじゃった』



 突然の言葉に視界が一瞬ぐらついて、まだ虚ろだった思考は急速に目覚める。


「弥生が……死んだ?」


 聞き返すと受話器から音漏れするほどに泣き叫ぶ声がいっそう強まり、叔父も心配そうに篤のやりとりを見ていた。


「とにかく、すぐに行く……」


 篤が呆然と呟くと、「早く……お願い……」とかすれそうな声が聞こえた。

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