第53話-「優しく見守っててあげるわよ」①

「そんな……。なんでだよ……」


 篤にもたらされた報せは、あまりにも突然だった。それはデートの翌日で、放課後には優月と御土産を持って、弥生の病室を訪れる約束をしていた。


 しかし、篤が相原病院に駆け込んだのは午前六時。エントランスはまだ開放しておらず、裏口から入るとすでに中野が待っていた。案内されるがまま駆け足で地下に降りる。


 当然ながら窓は無く、眩い朝を微塵も感じさせない薄暗い廊下を中野について走る。


 そして目的地だという部屋の前でひとつ、深呼吸をした。

 そこは篤も幼き日に訪れた場所。父親の冷たくなった身体を最後に触れた、暗くて深い闇のような空間。


 篤は霊安室の前に立った。

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