第13話
周りは暗くなり、姉の追跡を早々に
豆の入ったスープ缶を開け、串に刺した干し肉と一緒に火にかける。干し芋を
(まあ、こういうのも悪くないよな)
最近は比較的金回りが良いので携帯食も豪華だ。イズールはそこまで食事にこだわりがあるわけではないが、ミレイがうるさいので食事には随分と予算を
食事を平らげ、明日の行動予定を考える。
陽が昇れば方角はわかるので、帰ることはできるだろう。ミレイも放っておいても一人で帰って来れるだろう。
問題はミレイを探さず
俺は姉を心配し、昼夜問わず探しましたよ、努力しましたよという姿勢をアピールしなければならない。間違ってもイズールが先に家に着くことがあってはならない。
(これは難しい問題だぞ…)
リュックを枕がわりにしその場に寝転んだ。
久しぶりに友達のところにでも遊びに行こうか…。いや、この前学会で会った時に
そんなことを考えているうちにうとうとしてきた。
火の
(踏み折れる?)
眠気が吹き飛び、意識が
イズールはゆっくり立ち上がり、音のした方向に耳をすませる。今は何も聞こえず、人の
では野盗ならどうか?これが一番ありえそうな気はする。どうしたものかと
「おい、いい加減出てきたらどうなんだ。俺は影律士だ。その気になればここら一帯を吹き飛ばすこともできるんだがな」
もちろんそんな
「あまり上等な
気を抜いていたとはいえ、予想以上に接近を許していることにイズールは
距離を取ろうと、地を
(何が起こった…)
天地の区別も判断できないほどに混乱した頭で、現状を理解しようと
背後の敵から逃れるために前に跳び出したイズールを、敵は前方から
「
イズールは意識の集中を
「安心して、これ以上攻撃する気はない。
女は無駄のない手順で、イズールが
お互いの視線が
それまで油断なく立ち回っていた女に隙が生じる。
イズールはその一瞬に
その勢いに任せ体を起こしたイズールは、女を俯せの状態で地面に押し付けた。イズールは体重をかけ、右腕を
「危害を加えるつもりはなかったんだけどな、物騒な世の中だから腕の一本ぐらいもらっておくぞ」イズールはさっきの女の
ハッタリのつもりだがじわじわと力を強める。いざとなれば本気で折るつもりで…。
「降参よ」女は
「仲間がいるな?そいつの姿を拝むまでは、『はいそうですか』と離してやるつもりはない」その仲間にも聞かせるつもりで声量を上げる。
「いないわ、私一人よ」
「信じられないな。俺の背後から声を掛けた次の瞬間には前に回り込んで
「人並みに頭を使えばわかりそうなものだけど?」妙に
「虚影律か」
「正解」相手の声が、遥か森の暗がりからイズールの耳に届く。
こんな使い方があるのかと感心した。いつもミレイを脳筋と馬鹿にしているイズールだが、自分も少し頭が固かったと反省する。
「で、なんで俺を襲った」
「勘違いしているようだけど、先に
「なら、ちょっかい出さずにとっとと逃げればよかっただろうが」
「ここら一帯を吹き飛ばすとか言われたら安心して逃げられないでしょ。あなたが度し
痛いところを突かれてイズールは
「納得したなら
「あ、ああ…」
イズールは急に情けなくなり、
「すまない、俺が早とちりしたみたいだ。普段からこうじゃないんだが…」しどろもどろに言い訳じみたことを口にする。
女はかなり長身で、百七十五センチメートルくらいはありそうだ。イズールが今まで出会った女性の中で一、二を争う。
「いえ、謝らなくてもいいわ」
女はそう言い、どんな男でも
――と、その細腕からは信じられない威力の拳が、イズールの
「これで痛み分けね」
不意の一撃に
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