第9話
それに関しては、ただ運が良かったに過ぎないとイズールは考えていた。今回
それに比べ、さっき
ミレイのおかげで
生き残ることはできたが、
やはり
イズールとロウ=サーが
その後に用心しながら観音開きの扉を開く。そこにはいくつかの巻物と
「これだけ…?」スホイが失望も露わに呟く。
「そう思うんなら俺にください、
「いえ、それはちょっと…」
自分たちがどれだけ苦労しようと、その価値を理解できない者の元に
遺跡の
宿に着くとイズールは最後の気力を振り絞り風呂に入り汗を流した。その足で部屋に戻り寝床に倒れ込んだ。
いつも朝の早いミレイも珍しく同じ頃に起き出した。
「ゔぁわわわ…肉食べたいね」ミレイの起きて開口一番の
「ああ、俺の筋肉も同意見みたいだ」回らない頭で答えながら、二人
そこで事の
食堂に入ったイズールとミレイは、先客のブルとロウ=サーに
「そんなことより」そう
「エッダが!?」
「ええ調査員がそう証言したようです」
内容はこうだ。
昨晩、宿で冒険者たちを下ろした後、馬車はスホイを自宅で下ろし、最後に公社が運営する研究所へ走らせた。しかし馬車は研究所へ到着する前に急停車した。調査員の二人は酔っ払いでも飛び出したのかと気に留めなかった。だが
調査員の一人が様子を見ようと馬車の扉に手を掛け押し開けた瞬間に腕を
「御者や調査員の二人は軽傷だったそうですが、かなり
「そうでしょうね。生還して気が
「初めから宝を
ミレイが当然の疑問を口にする。そういえば当初、ミレイがエッダを怪しんでいたことを思い出す。
「わかりません。スホイさんも何か知っていることがあれば報告してほしいとおっしゃっていましたが…」
「はあ?知るわけないでしょうが、馬鹿じゃない?」食事がなかなか来ず、ミレイはイライラした調子を隠さない。
「これまでの経験を買われて今回の依頼に参加したと言っていましたけど、どこかから
今回の求人に応募するには、
「それで、お二人はこれからどうするんですか?」これ以上この話を続けても得るものはないと、ロウ=サーが話題を切り替える。
「昼過ぎには出ようと思い――」
「帰んないわよ。まだやることがあるんだから」イズールの言葉をミレイが
そういえば裏組織と決着をつけるとかなんとか言っていたが、本気か?
「いや、俺は帰る」イズールは
「本当におめでたいよね、イズって」ようやく運ばれてきた料理を口一杯に
ロウ=サーとブルは話が理解できずに苦笑いしながら、ミレイの食べっぷりを眺めている。
「大丈夫、ちょんちょこちょんに
こんなことなら昨日、怪我の一つでもしておけばよかったと後悔したイズールであった。
渡りの回廊1 了
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