第5話
翌朝、イズールはいつもより早く目覚めた。隣に寝ていたミレイの布団はすでに
昨夜のうちにある程度の準備は済ませておいたが、見落としがないか確認し、いつでも出られるようにしておく。
朝食は時間になれば宿の人間が部屋まで持ってきてくれる
「さて、それじゃあ行きますかな」ミレイは荷物を持って立ち上がった。
それから二人は宿の外へ行き他の
この寺院は最近になって発見された先史時代の遺跡だ。封印が施されていたため、長らくその存在を見落とされていた。しかし、経年によりその封印結界もいよいよ機能しなくなり、その姿を
近年になり、先史時代より続く
「それじゃあ隊列を決めましょう」ミレイが率先する。
この中ではミレイの階級が一番上だったので誰も文句は言わなかった。話し合った結果、イズールとブルが先頭を務め、スホイと調査員二人が隊の中程に、その脇を固める形でロウ=サーとエッダが左右に展開する。
寺院なので罠の心配はないだろうが、イズールは慎重に進む。言葉数は少なく、スホイや調査員が声を潜めて話している。イズールたち
それはイズールとしても同様だった。この寺院はおそらく〈
〈滴る者〉とは創世とともに生を受けたとされる何かだ。先史時代の初期に信仰されていたとされるが、時代が進むにつれて廃れてしまった宗教の一つである。〈滴る者〉を信仰していた寺院は、後に
イズールは新発見があるかもしれないと期待すると同時に、これが一企業に独占されてしまうのかと思うと失望もした。
自分は今、一介の冒険者でしかないのだから、できる仕事をこなそうと気持ちを切り替える。
遺跡内は非常に綺麗な状態を保っていた。
調査員は寺院内の地図を順調に作成していった。途中で何度か二手に分かれて調査したいとの申し出があったが、ミレイは頑としてそれを許可しなかった。
「いい加減にして。戦力を分散させるだけの余力はない」短気なミレイが
「私は戦いの専門家として言っているのよ。でも、あんた達が効率と自分の命とを
「申し訳ない。私たちは皆さんの指示に従いますので…」スホイが
調査員からすれば、この中で一番頼りなさそうな見かけのミレイと二人にされるなんてとんでもないというのが本心だろうが、ミレイに一対一で護衛してもらうことが一番安全なのだ。そのことに、おそらくミレイ自身も含め誰も気付いていないことにイズールは苦笑いした。彼女がそうすると決めたのならやり遂げる、ミレイにはそれだけの強さがある。
「そろそろ、つまらない
「そりゃあ、これだけの大移動なら嫌でもね」ミレイはすでに抜刀している。「イズ、ロウ=サー、エッダは三人を守りつつ後方支援。私とブルで切り込む。異論は?」
全員が静かに戦闘体制へ移行する。それだけで経験豊富な冒険者だと知れる。妖が一匹通路の奥から姿を現したかと思うと、それに続いて次々と湧いてくる。妖の習性として建造物の奥深くへ潜ることが確認されている。良い方に考えれば、寺院の
ミレイは
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