第2話 失恋

僕は昨日失恋した。

もう限界だった。彼女にはとても悪い事をしたと思う。

自分は壊れていた。

幸せになんてできる自信がなかった。

僕は彼女が大好きだった。

だから彼女がいじめられているのが許せなかった。


ある日、僕は彼女をいじめていたクラスのリーダー格の男を呼び出し、いじめを辞めるように説得した。

「彼女をいじめるのをやめてください。」

僕は恐る恐る言った。だが、

「そんなに言うならお前が代わりになれよ。」

リーダー格の男達は笑いながら言ったり

僕は言い返すことが出来なかった。

気弱な自分の性格を恨んだ。

それから、毎日のように嫌がらせや暴力を振るわれた。

だが、彼女がいじめられるよりは平気だった。


彼女への嫌がらせが無くなり僕は嬉しかったのだ。これで、僕が飽きられれば終わりだ。

そう思っていたのだが、僕をいじめるのに飽きたクラスの奴らはある日同じ学校に通う妹にまでいじめの対象にした。


意味がわからなかった。


妹は関係ない。

だが、奴らはなにか理由をつけて誰かしらをいじめていないと落ち着かないらしい。

わけも分からず嫌がらせを受ける妹。

日に日にエスカレートしていくいじめに、その光景に僕は無力だった。


やがて妹の心が壊れてしまった。


妹は引きこもってしまい、不登校になってしまった。完全に巻き込んでしまい僕は自己嫌悪に苛まれていた。

何も話さない訳にはいかない。だが、自分の弱さをさらけ出す事になる。何も出来なかった僕を家族は許してくれるのだろうか。けど、ここで話さなければ全て投げ捨てる事になる。家族にも全てを話すことにした。


「妹に謝りなさい。彼女とは別れなさい。」


親からは酷くしつこく家に帰るたびに別れろと言われるようになった。

当然の反応だろう。妹は何もしていない、僕と彼女の問題に巻き込んでしまったのだから。だが、彼女も何も悪くない。


僕はどうすればいいか考えた。そして1つだけこの状況を打破できる案を考えついた。

それは、僕が自殺をして、いじめていた奴らの名前を書いて全員退学にしてもらえばいい。

そう考えた。

奴らも少しは反省するだろう。

なんて、復讐心もあったが本音は逃げ出したい、ただそれだけだった。

彼女の顔がよぎり、泣きそうになる。

幸せにしたかったな。

ごめんね。

そう思って僕は首を吊った。



僕はふと我に返る。

何故今意識があるのだろう。走馬灯と言うやつなのか。

そんな思案をかき消すほどの景色が目の前に広がる。


「ごめんね、ごめんね」


暗い部屋でひたすらに謝り続ける彼女がそこにいた。痩せ細った腕、足、痩けた頬、どうやら何日も何も食べていないみたいだ。

何なんだ。これ。


どうやら神様というのはとても意地悪みたいだった。

自分の勝手で彼女はこんなにも悲しんでいるんだぞと伝えているようだった。


「謝るのは、僕の方だよ。」


これは罪だ。何もかも投げ出してしまった罪なのだ。




しばらく経って、僕の通夜が行われるようだった。

身なりを整えている彼女は少しだけ表情が明るく見えた。それだけで僕は嬉しかった。

この日が来るまでずっと蹲っていた彼女が少しだけ前を向いていた。

彼女が出掛ける。

僕も着いて行った。


葬儀場に着くと、そこには僕の亡骸があった。

そこでようやく僕は死んだのだと実感出来た。

彼女はまた泣いていた。

そんなに僕の事を想っていてくれていたんだね。

僕まで涙が出てきた。

ずっと罪悪感に押しつぶされそうになっていたけど、その罪悪感さえもかき消してしまうほどに彼女は泣いていた。

謝るのはもう辞めよう。


「ありがとう。こんな僕を愛してくれて。」


そう呟いて。少し微笑んだ。

彼女にも僕が見えているようだった。

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