終わらない戦い

 高層ビルの30階。

 空き部屋が目立ち閑散とするこのフロアで、ただ1つ、光が漏れる扉があった。

 その扉を勢いよく、突き破る。


 リビングにはアイツがいた。憎くて憎くてたまらない、アイツがいた。

「お前、まだ生きていたのか…!」

 アイツは俺の姿を視認すると、目を見開いてそう言った。アイツの中では俺は死んでいたことになっていたのだろう。

「あの程度で死ぬほどヤワじゃねぇ」

 数ヶ月前、強盗した1億円を巡って二人は本気の殺しあいを興じた。この部屋で殴り合いを始め、アイツより先に体力を消耗した俺は、首を絞められて意識を失った。そしてベランダから投げ捨てられた。30階の高さだ。地面に身体が着地した瞬間、普通は完全に死ぬ。

「道理でマスコミに報道されなかったわけだ。誰かが死体を処理したのかと思っていたが、まさか生きていたとはな。どうやって生き延びた?」

「キルミー二期…」

「は?」

「俺はキルミー二期を見るまで死なない…!」

 そうだ。俺はキルミーベイベーの二期を視聴するまで絶対に死なないと誓ったのだ。だから20階から落とされた程度では死なない。いつかやすなとソーニャは帰ってくる、そう信じている。

「諦めろ!もうキルミーは帰ってこないんだ!」

「だから、お前は嫌いだ。前から二期には反対しているからな」

「反対しているのではない!!現実を見ろと言っている!!声優が1人逮捕された時点でもう絶望的だろう?!」

「…うるせえなぁっ!」

 俺は電光石火の勢いでアイツに飛びかかった。不意を突かれたアイツは対処できず、俺は馬乗りになって首元を掴むことができた。

「…死ね…!」

「クッ…やめろ…!俺だって…本当は信じたいんだ…キルミー二期を…!」

「命乞いはやめろ。見苦しい」

「ああぁぁ、、……」

 やがて呻り声は止み、呼吸は止まり、鼓動は止まった。俺は息絶えたアイツの死体を、あのときの俺と同じようにビルの外へ投げ捨てた。


 復讐を終えた俺は、世間から身を隠すように生活をしていた。強盗をしようが殺人をしようが、必死に立ち回ればバレないものだ。全てはキルミー二期のため。俺は未来を信じて、死なずに生き続ける。

 1ヶ月後、突然誰かが自宅に侵入してきた。

「警察か?!」

 慌てて玄関の方に目をやると、見慣れたシルエットが姿を表した。

「お前、なんで生きて…?」

「みなみけ三期…」

「は?」

「俺はみなみけ三期を見るまで死なない…!」

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