ハゲと桃太郎

 むかーしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんはハゲでした。

 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 すると川上からどんぶらこどんぶらこと、大きな桃が流れてきました。

 おばあさんは桃を家に持って帰りました。


 その日の夕方に、おじいさんが桃を調理することになりました。

 おじいさんは大きな桃を包丁で真っ二つに切ろうとしました。

 すると見ていたおばあさんがブチ切れてこう言いました。

「このハゲーーーーーーーー!!!!!」

 轟くような罵声におじいさんはたじろぎ、

「すみません……」

と返す他ありませんでした。


 おばあさんの罵倒は続きます。

「違うだろーーーーー!!!!?

桃の中に桃太郎が入ってたらどうすんだ!!!??

バカかお前は!!???」

「すみませんすみません…」

「お前が桃太郎殺したら私の責任になる!!!!

これ以上私の評判を下げるな!!!!

私の心を傷つけるな!!!!」


 おじいさんは横から桃を切ろうとしました。しかし手が震えてうまく切れません。

 おばあさんはおじいさんを殴り始めました。

「すみません、包丁持ってるので…」

「ちーがーうーだーろーーーー!!??」

「すみません、あの」

「それだと桃太郎に傷がつくだろ???!!

バカかお前は??!!!」

「あっ、すみません…あの、叩くのは、申し訳ないです…」

「頼むから私に恥をかかせるな!!!!!

お前が受けた痛みがなんだ!!!!!

私が受けた痛みのどのくらいか分かるかーこのやろう!!!!!」


「お前はどれだけあたしの心を叩いている!!?!?」

「はい、あの…」

「お前はどれだけあたしの心を叩いている?!?!?」

「はい、その痛みはもう…」

「わかってないよ!!!!!!」

「いや、叩くのは…すいません…」

「お前は頭がおかしいよ!!!!!

私が言った、ただ桃太郎を中から出して桃だけ調理しろって言ってんだ!!!!

お前が行け!!!!

お前が洗濯行って来い!!!!

お前が明日から芝刈りと洗濯やれ!!!!

お前が全部洗ってこいよ!!!!」


 そうしたやり取りの後、おじいさんがなんとか桃を調理しました。

 すると桃の中から元気の良い、週刊文春の記者が現れました。

「週刊文春の田中です。只今のやり取りはきっちり録音させていただきました。明後日に記事を発表しますのでよろしくお願いします」

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