第4話 僕は魔法使い よしみさんとあらたんのお話
キーワード
クラウドファンディング
9月25日締め切り
みんなのおかげで手に入れることが
タイトル『僕は魔法使い』
「ママ、僕は昨日から魔法が使えるようになったよ」
「あら、そうなの? よかったわね、 あらたん」
ママはまだ、僕があまり上手にしゃべれないのをいいことに、たまに適当に返事をするんだ。そりゃ、大人からしたら、赤ちゃん言葉にしか聞こえないだろうけれど、それでも、ママはたくさんわかってくれる。
そんなママでも、たまには適当に返事をするんだ。なんとモドカシイことだろう。
「ママ、僕は魔法使いになったんだよ、だから何でも願い事を叶えてあげられるんだ。ママは何をしたいの? 何でも叶えてあげるよ」
「そうね、今日はいいお天気だから、お姉ちゃんと一緒に公園にいこうか? ふふ」
僕は昨日、魔法使いになった。何でも願い事が叶うんだ。
だから、まず初めに、ママの願い事を叶えてあげようと思ったのに、あんまり適当に返事をするものだから、ちょっと意地悪してやろう。
そうだ、突然、願いを叶えて、びっくりさせてやろう。
僕は公園を目指すベビーカーの中、一生懸命に考えた。9月とは言え、残暑の日差しは、僕たち子供の、まだまだやわらかくて薄い皮膚をツンザクように、厳しく降り注いでいる。
ママはお絵かきをするのが仕事だ。だから、僕も、よくお手伝いをしている。
ママの絵は小さくちぢこまって、ダイナミックさが足りない。だから、僕はママに教えてあげるために、壁や床一杯にダイナミックな絵を描く。ママは、とっても喜んで、大声をあげながら僕の絵をぞうきんでなぞって勉強している。
最近はママもパソコンでお絵かきすることが多くなった。機械音痴のママがパソコンに手を出すなんて、時代の流れを感じる。だから、僕もパソコンを使ってお絵かきすることにした。
でも、パソコンがぼろだからうまく動かないんだ。画面にクレヨンでお絵かきしても、ぼろだからすぐに消せない。水をかけて消そうとしたら、ママからコップを取り上げられた。ママはパソコンに弱いからしょうがない。
そうだ、新しいパソコンを僕が魔法でプレゼントしよう。
ママはいつも言っていた。
「はぁ、せっかくペンタブを新しくできたのに、パソコンがぼろじゃ、全然はかどらないわ」
そうだ、僕がパソコンを新しくして、ママを驚かせてあげよう!
「りるる!らるる!新しいパソコンおうちにおいで!」
僕は、呪文を唱え終わるが早いか、さっそくベビーカーを飛び降りて、公園からおうちに向かって、高く跳ねるカモシカのように駆けだした。
「待って! あらたん! 危ないから!」
僕はママを置き去りに、みるみる加速してく。あっという間にトップスピードに達した僕の体は、風に乗って軽くなり、まるで宙を舞っているかのようだ。
「もうしょうがないわね、よいしょ、捕まえた。この子、まだ足をバタつかせているわ」
僕はそのまま風になり、空を飛んでおうちに到着した。
――ピンポーン
「こんにちは! 宅配です!」
「あ! 届いた! 新しいパソコン! 9月25日締め切りギリギリにクラウドファンディングが達成できて、みんなのおかげで手に入れることができた! 新しいパソコン! これで、みんなのイラストをたくさん描くことができるわ! みんなありがとう!」
「ママ、そのパソコンは、僕の魔法でおうちに届いたんだよ」
「あらたん! パソコン来たよ! 凄いね!」
ママの喜ぶ顔をながめるのは、いくつになってもいいもんだ。さて、さっそく、新しいパソコンの使い方をママに教えてあげるかな。
「あらたん! だめーーー! パソコンはオレンジジュース飲まないのよーーー!」
おしまい
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