第6話 焼き芋一族の戦い おいも婦人のお話
タイトル『焼き芋一族の戦い』
主人公『おいも婦人』
キーワード 『北海道』『沖縄』『台湾』
「さて、今日、焼き芋かぶりもの一族のみんなに集まってもらったのは他でもないわ、焼き芋を夏に売るためにはどうしたらいいか、作戦会議を開きたいと思います」
「 みんなって言っても、君を含めて僕たち夫婦二人しかいないけど」
「そんな細かいことはどうでもいいの。焼き芋は冬にしか売れないってことは、私たちにとって死活問題なのよ」
「焼き芋って熱々だから美味しいんだろう? だから冬にだけ売ればいいじゃないか。夏はそうだな、金魚でも売るか?」
「金魚売りなんて今時流行らないわ。焼き芋を使ったおいしいスイーツを売ればいいのよ!」
「スイーツね、でも、色んな所がやってるよ、難しいんじゃないのかな?」
「いろんなところがやってるって事は、うちにもやれるって事じゃないの! 焼き芋を冷やして売ればきっと売れるわよ!」
「それは良い考えだと思う」
「でしょ? それで、まずはターゲットを沖縄に設定しようと思うの」
「なるほど、元々暑い地域で、焼き芋が売れる方法を考えればいいってことだな!」
「そうそう沖縄は常夏の島! その暑さのせいで、地元の人は日中は暗い部屋に閉
じこもっているそうよ!」
「本当かな? それはそうと、冷たさに負けない甘い甘い
「じゃあ、ただ冷やすだけってこと? それじゃ、オンリーワンにはなれないわよ?」
「そもそも、焼き芋自体が全国どこにでもあるんだから、それでもいいんじゃないのかな? 僕らには『いしやきいものうた(やきいも2.0)』があるじゃないか! 僕らは、それだけでオンリーワンさ!」
「そうね! ユーチューブでも大人気だし! 紙芝居『やきいもヒーローマン』だって、絵本の『ふーわりふーわふわ』だってついているわ!」
「そうさ! 僕らは最強さ!」
「焼き芋は、焼いただけで、どんな料理にも負けない不思議な食べ物なのよね! きっと冷やしただけでもおいしいわ! 冷やし焼き芋を沖縄で売りましょう!」
「焼き芋を冷やす冷凍車に乗って売り歩けばいいんだね?」
「そうね、まずはそこから始めましょう! それからフランチャイズ化すればいいのよ!」
「フランチャイズなんて、難しいこと知ってるんだね」
「そのためには夏に使うお芋を確保しないといけないわ……」
◇
かくして、沖縄での販売活動が始まった。
しかし、なかなか売れない。冷やし焼き芋だけではインパクトが弱いのだろうか。
◇
「おかしいなぁ、なかなか売れないね? ちゃんと宣伝しているのになぁ」
「そうだねぇ、なんでかなぁ。じゃあ焼き芋の中をくりぬいて 焼き芋アイスを詰め込んで売るっていうのはどうだい?」
「それ、いいアイディア! 見た目は焼き芋、中身はアイス! これだったら売れるかもしれないわ! 焼き芋を半分に切って中身をくりぬいて、くり抜いたお芋はアイスクリームに練り込んで、焼き芋をコーン代わりにした、焼き芋ソフトクリームを売りましょう!」
「それはいいぞ! 早速試してみよう……っとお客さんだ!」
「はいさい! いったー、まーそうなはなしちょーんやー!」
「いらっしゃませ! やっとお客さんが来てくれたわ! ぼうや、こんにちは! 小学生かな? ってあなた! その手に持っているのは!?」
「ぬーって焼き芋だしが?」
「その焼き芋、どこで手に入れたの?」
「まーって? きっさから質問ばっかりだやー、焼き芋屋さんっし買うたんんかい決まっとーんだろう?」
「まさか、私たちの他にライバルがいるなんて……でも、こんなに暑い沖縄で、どうやって焼き芋を売ったんだろう?」
「ぬー言うとーんんだい? 焼き芋は、うちなーっしー1年中大人気で、むる大好きさ! わんなんかめーなち焼き芋食べとーんよ!」
「なんですって!?」
「そうか、沖縄は1年中暑くて、そもそも季節感が薄い。季節感が薄いから、季節商品も季節に関係なく売れるんだ。焼き芋も1年中売れるわけか」
「私たちの努力って一体……」
◇
こうして、安納芋焼き芋は、普通に好評で、普通に大繁盛した。ついでに、焼き芋ソフトも売れて、暑い沖縄で大成功をおさめた。
◇
「ようし! この調子で一気に台湾へ進出しましょう!」
「そうだね、でも、沖縄で焼き芋がたくさん売れたから、少しお休みを取って、台湾で遅めの新婚旅行なんてどうだい?」
「あらん、素敵! でも、休んで切る時間はあまりないわよ! 次は北海道進出よ!」
「北海道!? 何でまた!?」
「暑い沖縄で熱い焼き芋が売れたんだから、寒い北海道では冷たいアイスが売れるに決まっているじゃない!」
「そんな、安直な……」
「うるさい! いくよ! レッツゴー!!」
◇
焼き芋一族の戦いは、まだ始まったばかりだった。
つづく
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