第108話 騎士団
「え? 何言ってるのかな……。ウチは闇ギルドを潰そうとしてるんよ? それに……ミゴールに操られてたりとかもあったし、ウチは全面的に被害者だよー」
アウロラは微笑みながら肩を竦める。
「じゃあ、何故リーナスを殺した? それにあいつ……あんたを見て『怯えてた』ぞ」
グレインはアウロラを見つめたまま、静かに問い掛ける。
「リーナスはさ……、冒険者ギルドを裏切って闇ギルドに入ったじゃない。だったら、冒険者ギルドの関係者を見たらビビると思うよー? ……そんなこと言って、グレインはナーちゃんをギルマスにするために、ウチの命狙ってるんじゃないの?」
アウロラは依然としておどけた様子でグレインに質問を返す。
「別に、ナタリアにはギルマスやって欲しいとは思ってないぞ。だから、俺がお前の命を狙う理由は無い。それより、質問に答えろよ。……何故リーナスを騎士団に引き渡さず殺したんだ? ……あいつの口から、あんたの正体がバレるのを防ぐ為の口封じだったんじゃないのか?」
アウロラはふぅ、と小さく溜息を吐く。
「そんなこと言ったらさ、疑うのはいくらでも出来ちゃうよね……。証拠はあるの? ウチは闇ギルドを潰そうと──」
「あいつは……いや、『緑風の漣』のメンバーは、全員あんたの顔を知らなかった筈だ」
グレインがそう言うと、途端にアウロラの顔から表情が消える。
「俺達、拠点はサランだったが、基本的にあちこち遠征行ったり遊び歩いてばっかりで、一度もギルマスを見たことがないパーティだったんだ。俺もあんたに初めて会ったのは『
「ウチはこんなにボロボロになってここまで駆けつけたのに……黒幕扱いされるなんてひどいよ……うぅっ……」
最終的にはアウロラが泣き出し、トーラスがおろおろと慌てている。
「グレイン、それはあくまで君の推測だよね? 確たる証拠はないじゃな──……姉さん?」
トーラスが憤ってグレインを見るが、グレインは彼ではなく、ラミアの様子を凝視していた。
そこで初めてトーラスは、ラミアが尋常ではないほど震えていることに気付く。
「あなた……さっき城壁で、私が吹き飛ばしたはずの魔導士よね? ……その魔力、間違いないわ……。生きてたのね?」
ラミアが声を震わせながらアウロラに問い掛ける。
「なんだ……あなた、もうこっちに戻ってきてたんだね。……相当走ったでしょ?」
アウロラは平然とラミアに話し掛けている。
「アウロラがリーナスに魔力を供給してたってことか?」
グレインは再び腰の剣に手を掛け、身構える。
ラミアの様子を見て、トーラスもようやく信じたようで、アウロラから距離を置く。
「アウロラ、流石にその名前のまま闇ギルドで活動してないよな? 闇ギルドではなんて偽名を使ってるんだ?」
「なんで教えなきゃいけないの? 嫌だよー。それに、闇ギルドとは無関係だってば、む・か・ん・け・い!」
アウロラは悪戯っ子のようにケラケラと笑っている。
「しょうがない、捕縛して騎士団に突き出すしかないな」
グレイン達は剣を抜き、戦闘態勢をとる。
「ふふふっ、そんなことができるかなー?」
アウロラはいつも通りふわふわした様子のまま、笑顔を崩さなかったが、突然大きく息を吸い込む。
「キャァーー! 誰か、誰か来てぇー!」
アウロラが大声で叫び始めたのだ。
すると、甲冑を着込んだ騎士団員達がアウロラのもとに殺到する。
「冒険者ギルドサラン支部マスターアウロラ様、如何なされましたか!?」
騎士団のリーダーと思われる者が、アウロラの傍に駆け寄り、跪く。
「奴らは闇ギルドの残党よ! 捕まえて懲らしめておやりなさい」
「「「「なんと! 承知いたしました!」」」」
言うが早いか、騎士団員は一斉にグレイン達を取り囲む。
「待てよ! 闇ギルド関係者はアウロラの方だぞ!」
「五月蝿い! 無駄な嘘を吐くな!」
「貴様らのような得体の知れぬ者達とギルドマスター、どっちを信じるかは明白だろうが!」
「ヘルディム王国を分断した逆賊め!」
グレインは必死に叫ぶが、騎士達はまるで聞く耳を持たないといった様子であった。
「君達、ちょっと待ってくれないかな」
騎士達とグレインの間にトーラスが割って入る。
「トーラス様! 貴方が……いや、貴様が闇ギルドの資金源だったとはな! 名家も地に落ちたもんだ!」
「……兄様……信じてもらえなさそう」
「だな。ちょっとこれはまずいぞ」
見ればアウロラは何かの呪文を詠唱している。
「(なぁ、転移魔法は使えるか?)」
グレインはトーラスに耳打ちする。
「(……駄目だね。また封じられてるよ)」
「あなた方を無闇に殺したくはありません! 無駄な抵抗はやめて下さい! さもないと全員ここで命を落とす事になりますわよ」
「なんか立場が逆じゃね?」
実際に剣を突きつけられているのはグレイン達なのだが、セシルの言動はまるで、騎士達の命が風前の灯火である事を示しているようだった。
「まぁ、実際にセシル殿が魔法を使えば、こやつらは全員死ぬじゃろ。だが、さすがにそんな事はさせられぬわ」
サブリナがセシルの肩に手を置いて、彼女を制止する。
「騎士達は妾がやろう。他の者は……あの『裏切り者』を頼む」
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