293枚目 「晩餐と覚悟」


 夕食はファレのつまみ食いから守りきった魚の串焼きと、この村の麦で作られた麦麦しいパン、そして鳥肉と野菜のスープだった。


 全員が、干し肉をちぎるような音を立てながら黙々と食べた。


 焼き魚はひとり一尾ずつあり、クリザンテイムだけ体格を理由に三尾割り振られている。ファレは目玉が落ちた魚をまじまじと観察しながら焼けた魚肉を頬張った。あっという間に骨まで平らげるとクリザンテイムの皿から一尾かすめ取ろうとつぶらな瞳を見せる。ジェムシがそれを窘めたかと思えば、ファレは外の魚籠から生魚を拝借して噛みついた。


 つい先ほどまで麻痺毒で痺れていた弓引きと同一人物には見えないが、このマイペースさに場が和むのも確か。一触即発の後ということもあって食事に手をつけかねていたラエルだったが、聞けばこれらの料理はレーテとグリッタが用意したものだという。


 飲み込むまでに時間を要するパンは、この村で作られたものだ。イシクブールや魔導王国で食べたどのパンよりも固く麦の味がした。白砂漠時代に食べた石パンといい勝負だろうとラエルが言うとトカが頷き、ノワールは眉間に皺を寄せながらラクスの実を口に頬張った。


 どうあれ、この中州の浮島で作られた本村産の麦粉を使用したこのパンは、この村で生き残ろうとした者たちの生きた証である。


 弔いの念も、呪いに足る怒りも、飲み下す。


 スープで喉を潤し、魚の肉汁で味を誤魔化し、全員が用意された分を完食した。


「ごちそうさまでした」


 各々の祈りと作法にのっとり、食事の時間は瞬く間に過ぎる。


 焚き火を囲み腰を下ろした面々は、食器を片付けて戻ってきたラエルとハーミットを前に身体の向きを改めた。


 誰も言葉を発しないのは、彼らが「待っている」からだろう。


(勢いに任せた言葉じゃなくて、血が上った頭で考えた思い付きじゃなくて、ほんの少し乾きがあって、それでいて満たされたときに口にできる言葉……)


 つまるところ、ラエル・イゥルポテーが腹をくくらなければ話は進まない。


 ラエルは無言のまま、席に座らないまま、食事と皿洗いの為に束ねていた黒髪を解く。靴ひもは手首に結び留めて、血に濡れて変色した手袋を外し腰のベルトにかけた。


 傷痕に虹の粉コンシーラーを摺り込む精神的な余裕など、この村に来た時から無い。


 太すぎる腕輪の痕が衆目に晒されるのを少しも気にせずに、ラエルは腰に移していたナイフを鞘ごと引き抜いてハーミットに手渡す。肩にかけていたケープをほどき、腕にかけた。


 そうして黒魔術士は、徐に両手の手指を編む。

 ノットでもポイニクスでも月華の祈りでもなく、ただ雑に指を絡めて手を下ろす。


 この行為は魔術士にとって無防備・・・を意味する。


 武具防具の類をできるかぎり身体から外したこと。

 魔術をとっさに発現しないよう指を編むこと。


 これから口にすることに、真摯であることを誓約する。


「……私は。私を育ててくれた二人に感謝をしているわ。


「焼け焦げそうな日差しの中で、影を作ってくれたことを覚えている。


「凍えて死にそうなとき、火を熾してくれたことを覚えている。


「何も知らなかった私に、魔術や生物、社会のことを教えてくれた。


「何も分からなかった私に、何ができて何ができないのか、何が足りないのか教えてくれた。


「生きていくのに必要なことは、全て貴方たちに教わったの。


「貴方たちにどんな思惑があったのかとか、本心はどうだったとか、そんなこと気にならないくらい盲目に。私は、生きるために貴方たちから学んだ。


「間違いない。私は貴方たちに救われた。貴方たちだから、私を今まで生かすことができた。


「ありがとう。トカさん。


「これだけは、どうしても今の内に言っておきたかったの。こうも畏まる必要はなかったかもしれないけど。さっきの今じゃない? 『霹靂フルミネート』も撃たせてもらったし、ちゃらにするわね。……するのよ。


「それじゃあ、これから貴方の意に反する話をするわ。トカ・イゥルポテー。


「間違っても昼間みたいに魔力をぶつけてきたりしないで頂戴ね。私はいま無防備だし、多分二度目はハーミットが許してくれないわ。魔法瓶に入った親代わりなんて、できることなら見たくないのよ。だから、我慢してね。


「……………………。


「さっき、ハーミットと一緒に、私の考えをまとめたの。読むわね。


「――私は。蟲になった彼女・・の捕縛と裁判を希望するわ。


「私は誰に否定されようと蟲に成った彼女・・に人権を求める。個人としての意識がある以上、変質個体として討伐されるべきではなく人として人の法によって罪量を測るべきだと考える。


「あの人は。罪を漱がないまま終わらせていい命ではない。


「あの人が犯した罪は。何ひとつ謝罪も反省もしないまま楽に死ねるほど軽いはずがなく。許容できる私刑でことを収められる領域ボーダーを超えている。


「……私は、彼女・・にこれ以上の罪を抱えて欲しくはない。また同時に、彼女・・が罪の清算をしないまま寿命を迎えることを許容しない。


「事情はどうあれ、人の命を手にかけた変質個体を討伐するのに情状酌量の余地はない。裁判にかけたところで彼女は人の手によって死ぬことになる。私たちの手には届かない場所で。裁かれた事実だけが残る。


「私が提案するこれは、人の情を失いつつある蟲を、わざわざ第三者の介入を挟んで無理やり延命して処刑台へ連れて行くということ。この決断に善意や同情は存在しないし、彼女に与える苦痛を鑑みれば倫理にも人道にも反しているわ。


「私は。この選択を間違っていると思う。


「だってこの終わりには、誰も納得できないでしょう。


「でも私は、この立場を譲らない。


「彼女には育ててもらった恩がある。何があっても、どんな形であっても、例えどれだけ苦しませることになろうと。私は、あの人に変質個体ばけものではなく人として・・・・生涯を終えてほしい。


「……以上が、私の意志。私が出した、答え、です」


 ラエルは、視線を逸らしたくなるのを堪えながら言い切った。


 噛まずに言いきれたことに少しの安堵と、口にしてしまったことへの喪失感があった。吐き出した息を取り戻す呼吸は浅く、気持ち悪い湿り気が肌を滑る。


 ひとつ、ふたつと紫の目は瞬いて、それから肩の力を抜いた。


 まだ終わりではない。

 確認しなければならないことが残っている。


 ハーミットはラエルの調子が整ったことを見計らい鼠顔を揺らした。


「捕縛を試みるということは、相手にとどめを刺さないということです。非常に、分が悪い賭けになるでしょう。必然、負う必要もないリスクまで抱えることになります」

「……ええ。私は、貴方たちの信念を曲げてまで協力してほしいとは言わない。あくまで貴方たちの意志で、私に協力するか決めて欲しいわ」


 ラエルは指を解く。細い右手を自らの胸元に添える。


「私は私の欲に忠実を貫く。何が何でもあの蟲を生きたまま連れ帰る。引きずってでも、罪を償わせると決めたの。誰から恨みを買うことになろうと、受け止める覚悟はできてる」


 ラエルは丁寧に、明瞭に、そう口にした。


 指先も声も、目に見えて震えはしなかった。


(……震えていない、はずなのだけれど。真っすぐ立つのも辛いほど身体が震えている気がする。目は乾くし時間が遅くって、視界が歪んできた気すらしてくる……)


 決断を他者に明かす行為に、こんなにも気力が必要になるなど知らなかった。


(蚤の市の時だって、ハーミットは沢山の人の前で作戦を説明したり、話し合ったりしていたけれど。ネオンさんがそうだって気が付いた後も、冷静に意思確認と説明をしていたけれど)


 返答を待つ側の一秒は、こんなにも長い。


 胸元に添えた手のひらは、指を揃えたまま固まって動かせない。

 口を動かす間には尽きなかった度胸と勇気が徐々に薄れて、不安に塗り替わる。


 このまま、誰も口を開かなかったら?


(……大丈夫)


 夕食に使った器を片付けながら、少年と話したことを思い出す。

 ハーミットはラエルの考えを文書の形にしたあと、「大丈夫だ」と口にした。


 いつの間にか噛みしめていた奥歯を離す。緊張を、ほんの少し解く。


(大丈夫――私は、彼の言葉なら嘘でも信じていられる)


 言うべきことは全て言った、はずだ。

 黒魔術士は、口を結ぶ。


 ラエルにはどれほど時間が過ぎていたか分からなかったが、実際は彼女が最後に口を開いて閉じた、そのほんの数秒の間にあった思考と自問自答である。


 ハーミットは偵察から戻った伝書蝙蝠を右腕で受け止め、火を囲む七名に硝子の目を向ける。コートの口元を開き、鼠顔を押し上げた。


 琥珀は、燃えるような橙と冷たい水色を混ぜあわせ濁っているようにすら思える。しかし舞い上がった火の粉を映す瞳に、迷いは欠片もみられない。


「俺はラエルの手伝いをするよ。殺は『強欲』の信念に背くからね」


 琥珀の目と薄い唇をニコリと歪めて、少年は鼠顔の位置を戻した。


 伝書蝙蝠はジト目のまま顔を上げる。『ノワールは、最初からラエルにつくと決めていたです』と同調リンク越しの意思が全員に伝わった。


 トカは眉間に皺を寄せたままでいたが、こめかみを揉む。


「私は敗れた身だ。ラエルの目的の為に、この十指と技術を貸そう」

「……本当にいいのね? 言質はとったわよ」

「ふん。私は、せいぜい守れる範囲で守るべき者を守るだけだ」


 糸術使いは先ほどラエルがしたのと同じように指を絡めた。

 ラエルはトカからの視線が外れたことを確認して、ほんの少し唇を噛む。


 次に少女と目があったのは、淡い銅色と錆浅葱色だった。


 ファレは黒い義腕で顔を洗い、丸い双眸を「にた」と歪める。


「にゃあぁ」

「『にゃあ』じゃ分からねぇよファレ――俺は、個人的にはあんたらの力になれればと思っている。……トカさんが言った通り、負けたしな。それにさっきから、そこの白魔術士が殺気を放っててたまらねぇのよ」


 実に面倒臭そうにジェムシは苦笑するが、怒りや悲しみといった感情は感じられなかった。ハーミットと同じく何を考えているのか読みづらい人物ではあるものの、ツァツリーが目を光らせている限りは安心できるが――どうやら彼は、賊にしては比較的まともな精神をしているらしい。


 それなら、ラエルの提案に思うところもあるだろう。


 彼らはツァツリーの護衛を任せた際も安定して蟲を狩っていたと聞く。実力をセーブして確実に相手を無力化する冷静さと判断力は、戦闘の場でも大いに役立つ。


 懸念は彼と連携する二人の賊がどう判断するかだったが、ファレは欠伸をした。


「ファレは食べた分、働く。トカもラエルも、ファレにそうして欲しいって知ってるから」

「…………」

「クリザンテイムは、悩んでる? 決めた?」

「…………」

「にゃぁー、ファレとお揃い」

「だそうだ。目的が達成できるなら、せいぜい露払いの駒にでもしてくれればいい」


 三白眼を細めて自虐的に笑うジェムシから、ラエルは目を逸らさなかった。ツァツリーの目つきが鋭くなったのは、気のせいではないのだろう。


 針鼠の腕を留まり木替わりにノワールは被膜をつつく。黒飴の目は、同調リンクで集めた情報のみでは本意の判断がつかないと言いたげだった。


 ラエルは、口に出そうとした言葉を一度飲み込む。


 ……ジェムシは、元々第四大陸で騎士をしていたらしい。


 第四大陸から第二大陸へ流れ、渥地あつしち酸土テラロッサという新たな場所を得たにもかかわらず失って。そして今、仇討ちを諦めざるを得ない状況に追い込まれている。


(迷ってでも選んでくれた決断を、後悔してもらいたくはないわね)


「ジェムシさん、ひとつだけいい? 駒扱いなんてもったいないこと、私たちにさせないで頂戴」

「そうだね。『駒』は従順なものだけど、貴方たちはそうじゃないだろう?」


 ラエルに続いて、ハーミットが言葉を補強した。


 ――決断をしたジェムシに、必要以上に気を配る必要はない。


 中途半端な慰めや同情はこの場に必要ない。

 それは、ラエルやハーミットの役割でもない。


「っは、ぼこぼこにしてくれた割には随分と買ってくれるな?」

「まあね。ラエルもそうだけど、俺もノワールも修羅場をくぐってきてるからある程度は分かる・・・つもりだ」

「ええ。それに、例え貴方が私たち三人を巻き込んだ賊の一名だとしても、私はジェムシさんの手を借りたいと思ってるわ。これはいけないことかしら?」


 ラエルは言って、不器用に笑ってみせた。

 笑顔は時に武器になる。それは、隣に立つ少年から学んだことだ。


 ジェムシは不意をつかれて暫く口を半開きにしていたが、やがて目を伏せると首を横に振った。両手を上げ、降参の意を示す。


 言葉はなくとも、これでジェムシはラエルたちに協力してくれることだろう。


「……ありがとう。私も、貴方の期待に沿えるよう努力するわ」


 ラエルの言葉に返答は無い。

 代わりに、腕の長剣から手を離したカフス売りが口を開いた。


「ははは。敵が増えなくてよかったな! 思わず身構えちまったじゃあないか」

「……グリッタさん」

「そんな心配そうにしてくれるな。お兄さんは討伐派ではあるが、それはあくまでも変質個体が相手だった場合だ。蚤の市の顛末を知っている身としては根拠もなく無謀とも言えないからなぁ、それなら、お兄さんも湿布分の働きぐらいは約束しようじゃあないか!」


 ……妙に乗り気なグリッタに、少年少女は非常に苦い顔をした。


「グリッタさんには、できれば表に出てきてほしくないんだけどなぁ」

「な、お兄さんを戦力外だと言いたいのか! 腰は悪いが盾くらいにはなるぞ!?」

「そ、そうじゃないんだって」


 腰も問題かもしれないが、現在のグリッタは攫われたキーナと禁術によって命を同期させている状態だ。何が起こってもおかしくないというのに、これ以上不安になる事項を増やしたくないというのが少年少女の本音であった。


 しかし当の本人はそれを勘づかれないようにふるまっているので、表向きは参戦しない理由が存在しない。さて。この認識の差を、どう埋めたものか。


『お互いに言いたいことがあるのは分かるですが、細かいことは後にするです。同調リンクが混線してるです!!』


 歯ぎしりを始めたノワールにラエルとハーミットは仕方なく引き下がり、グリッタは鼻を鳴らしながら浮かしかけた尻を戻した。

 カフス売りの隣に腰かけていたレーテは隠すことなく愛想笑いを浮かべると、それから咳ばらいをする。


「私は、イシクブールに災いを持ち込む可能性を許せない立場だ。これは変わらない」


 眉間の皺は深く、錆色の目は真剣なまなざしをラエルに向ける。


「だからこそ私は、誰も見捨てたくないんだ。キーナもエヴァンくんもサンゲイザー殿もイシクブールに連れ帰る。結界や封印なら任せてくれ。戦闘に関しては、君たちに任せきりになってしまうかもしれないが――こちらこそ、頼む」

「協力感謝します。レーテさん」

「ええ。全員生きて戻ることが前提なんだもの、もっと欲張りに行きましょう」

「……それは頼もしい。それなら、この土地を転がす構想でもしておこうかな」


 レーテの眉間の皺は取れず、憔悴は目の隈として刻まれたままだった。それでも、冗談を言えるほどには腹を決められたと知ってラエルは安堵する。


 黒魔術士は握りしめていた手を解き、円陣の最後に腰かけた白魔術士と向き合った。

 ツァツリーは黒曜の眼をゆっくりと瞬くと、無表情のまま口を開く。


「……双方の事情と意見を知った限り。私はこの一件の正しい罪量を数値化できるとは考えていません。だからこそ。はっきりさせておきたいことがあります」


 ラエルはツァツリーの言葉を咀嚼して、息を呑む。


 表情から意志が把握できないのもそうだが、目の前の彼女から氷を押し当てられたかのような冷気を感じた故だった。


 瞳を見失う真黒の虹彩が、揺れることなくラエルを捉える。


「貴方の覚悟は。魔導王国の従者という立場的な責任や正義感から現れたものですか?」

「いいえ。育てられた側として、個人的に許せなかったからよ」


 ラエルは、隠すことなく答えた。


「人を殺すなと教えておいて自分はそれを破って? 何も説明しないまま一方的に人の腹に風穴開けたのに謝罪すらしなくて? しかも一般人まで巻き込んで籠城して? 挙句の果てには遺言染みた伝言で『殺して楽にして欲しい』って、あまりにもふざけていると思わない? こんなの、私が・・殴りに行くしかないでしょう?」


 それは先の小綺麗に言い繕った「提案」とは似て非なる「動機」。

 けれど、「最終目的」とは矛盾しない。


 ラエルは、大蜘蛛彼女を殴る為に祭壇へ赴く。


「そうですか」


 ツァツリーは、短い相槌を打つ。

 黒布のツインテールは金属輪を振り子にして、火を映して光った。


 つまり立ち上がって、ツァツリーはラエルとの距離を詰める。


 ぽん、と肩を叩く。


「それなら。拳を傷めない殴り方だけでも教えなければなりませんね」

「……え。まさか、今から?」

「戦闘中に骨を折るわけにはいかないでしょう?」

「確かに」

「ハーミットまで何を言っているの? ノワールちゃんも頷かないで? えっ、なんで引き留める人いないの、私も話し合いに参加」

「心配しなくても、頃合いを見て呼びに行くよ――って、聞こえたかなぁ……」


 あっという間に焚き火から距離をとった二人の間では近接格闘の指導が始まっている。小屋を挟んで向こう側に行くわけでもなく、目の前で練習してくれる分にはありがたかった。


(ラエルの身体能力は平均を上回っている。さっきの手合わせでも避けたりいなしたりはできていたから、これは案外ひょっとするかもしれないな。うーん、しかし魔術士とは……?)


 こうなってくると、どうやら認識を改める必要がありそうだ。

 立ち回りに余裕があってこそ魔術士なのかもしれない。


「ともあれ、話はまとまったな。あまり悠長にしていられる余裕はないが」

「……そうですね。それじゃあ、ラエルが素殴りを習得する間に情報整理と作戦会議だ。さっき、殺害より捕縛が難しいことを説明してもらったけど、相手はだ。俺たちは、大蜘蛛かのじょに勝てるかも怪しい」


 ハーミットは言いながら、ラエルを追いかけようとした伝書蝙蝠の脚をひっ掴んだ。ノワールは歯ぎしりしながら翼を畳むが、この蝙蝠には監視以外にも仕事がある。


「まずはお互いの能力と敵の情報を把握して。それから知恵を絞ろうか」


 そういうの、ここに居る大半の人は得意分野だよね?


 針鼠の挑発的な言葉に男性陣は顔を見合わせる。

 やれやれと、まんざらでもなさそうな顔で腰を上げた。




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